エモーショナルでノスタルジックな“夏”を撮る・前篇〜Xシリーズで四季を撮るテクニック〜
春・夏・秋・冬、日本の四季にはその季節にしか撮れない、素敵な瞬間がたくさんあります。この企画はそれぞれの季節における様々なシーンをXシリーズで印象的に撮影するテクニックやアイデアをお届けします。
今回のテーマは、たくさんの思い出が生まれる“夏”。青い海、照りつける太陽の日差し、故郷の田園風景、夜の手持ち花火……そんなノスタルジックで夏らしいシーンを撮影するコツをフォトグラファーの鈴木文彦さんに教えていただきました。今回はPoint1〜3までの前篇です。
Point1. 懐かしさを感じる色味に設定する
夏らしい写真を撮影する大前提として、まずは夏をノスタルジックに切り取ってくれる色を設定していきたいと思います。青ひとつとっても、くすんだ青、水色っぽい青、赤みを含んだ鮮やかな青など、さまざまなものがあります。人によってもシーンによっても正解は変わるかもしれませんが、今回は“記憶”というイメージに近い色にするため、フィルムシミュレーションは『クラシックネガ』を使っていきます。クラシックネガは、広く一般的に使われてきたカラーネガフィルムの色を再現したモード。
記憶に眠る、アルバムの中の写真のような雰囲気で撮影できるのがクラシックネガ。どこか懐かしい気持ちになります。この写真では、フィルム写真が持つ、ザラっとした粒状感を再現する機能『グレインエフェクト』をかけ、フィルム風の仕上がりにしています。
実家の周辺、実家にあるものなどを撮るだけで、子ども時代にタイムスリップしたかのような雰囲気の写真に。
Point2. 時間にこだわって撮影する
ノスタルジックな写真には、時間帯によって異なる“光の色”をうまく採り入れるのが大切です。昼間はメインの活動タイムではあるものの、太陽は真上にあるために印象的な写真にはなりづらいです。そこで、まず朝や夕方に撮るというチャレンジをしてみましょう。どちらも色温度は日中よりも高く青みがかります。しかし光の波長の関係で太陽光はオレンジがかるため、とても複雑な色を楽しむことができるのです。
この朝・夕の色の表現の大きな方向性を決めるのはホワイトバランスの設定。ふだんはAUTOにしている方が多いと思いますが、マニュアルで好みの色温度を見つけてみてはどうでしょう。Xシリーズならリアルタイムで設定による色の変化を見ながら変えられます。過度に設定を変えるのではなく、例えば夕方であれば青みと夕焼けの赤みの両方が出るくらいが美しいかもしれません。
夏の暑さを表現するときには日中晴天下での撮影がオススメ。ただし熱中症に注意!
夕方の撮影ですが、ホワイトバランスを『太陽光』で撮影することで、オレンジ色が強く表現されました。
Point3. 朝夕の逆光を利用してみる
また朝と夕の撮影では、太陽の位置が低いため、斜光や逆光で撮れる点も活かしたいです。斜光・逆光は、太陽光を印象的に使うことでドラマチックな写真が撮りやすくなるシチュエーションですが、肝心の主役が影になってしまうこともあります。ただ、主役を明るく写そうとすると、今度は明るい背景が白飛びを起こすという厄介な問題が出てきます。この明暗差、白飛び、黒つぶれを意識しながら、写真の主役をどのような明るさで表現したいかを考えることが重要です。特にAモード(絞り優先)やPモード(プログラム)で撮影しているときなどは露出補正を適宜おこなっていき、ベストだと思える露出で撮影してみましょう。
逆光の太陽の白飛び具合、人物の顔の明るさをファインダーでじっくり見ながら撮影しました。
駅の雰囲気を伝えるため、人物はシルエットに。無理に背景を明るくするよりも、その場の雰囲気は伝わるはずです。
後篇では、思い出がたくさん生まれる夏の夜での撮影のコツや、ノスタルジーを喚起させる風景写真の撮り方をご紹介します!
text&photo by 鈴木文彦