『X-T20』を片手に天王洲アイルフォトウォーク!運河沿いのボードウォーク、話題のアートラボ、北欧レストランのジビエ料理をご紹介
【IRODORIシティスポット〜天王洲アイル篇〜】
水上に浮かぶ街、天王洲アイル。“アイル(Isle)”=小島。品川駅から徒歩15分ほどに位置しながらも、水辺らしい穏やかさが心地のいい20万平方メートルほどのちいさな島です。十年ほど前までのビジネス・倉庫街といったイメージからは一転、リノベーションを施された倉庫にはライフスタイルストア「SLOW HOUSE(スローハウス)」や「SOHOLM(スーホルム)」といったおしゃれなレストランが入居。ドラマ・映画にも登場する最新トレンドスポットとして注目を集めています。
また近年は、“アート界のオスカー”と呼ばれる「モンブラン国際文化賞」を受賞した寺田倉庫が街のアート事業を牽引。同社が運営する画材ラボ「PIGMENT(ピグモン)」も天王洲アイルの重要スポットです。今回は、運河に面したアートの街・天王洲アイルを「X-T20」で撮影した写真とともにご紹介。やさしい風の吹くちいさな島で、ちょっとした驚きと画になる風景をたくさん見つけました。
天王洲アイルの街並み
ウォーターフロントならではの開放的な空気と景観は、天王洲アイル最大の魅力! 運河に沿って小島をぐるりと囲む板張りのボードウォークは、風にそよぐ緑と水の揺らぎが心地いい癒しの空間です。ブーゲンビリアやハーブといった目にも楽しいグリーンを眺めつつ、ほんのり海の香りを感じながら歩けば、まるで海外に来た気分! 運河に面したブルワリーレストラン「T.Y.HARBOR(T.Yハーバー)」のテラスでクルーザーを眺めながらランチ……なんてリゾートライクなシチュエーションを満喫できるのも、ここならでは。
倉庫街らしさを感じられるのが、T.Y.ハーバーに隣接する “ボードウォーク”。ドラマのロケ地として知られる“ふれあい橋“へつながるこの小道は、おしゃれなレストランやギャラリーが集まる注目エリアです。リノベーションによって洗練されたデザインと、もとは外国からの貨物を保管するために使われていた倉庫の無機質さとがあいまった、都市では感じることのない独特な雰囲気。なんだか映画の世界に入り込んだような不思議な気分を味わうことができました。
SOHOLM
ランチは、インテリアショップ「ACTUS(アクタス)」が手がけるノルディックフレンチレストラン「SOHOLM(スーホルム)」へ。ライフスタイルストア「SLOW HOUSE(スローハウス)」と隣接した店内は、窓の外に運河を望める穏やかな空間。高い天井とあたたかみのある北欧インテリア、シンプルながらも品のいいテーブルセッティングが、リラックスしたひとときを演出してくれます。
スーホルムでいただけるのは、旬の食材を使ったヨーロッパの郷土料理。現地では食文化として親しまれているジビエをいただけるのも人気の理由です。
今日は、ランチメニューのなかからメイン料理として「猪肉のパルマンティエ」をチョイス。前菜には、瑞々しいナスとアンチョビの塩味が絶妙なバランスの冷たいスープ。熱々のパルマンティエは、バケットと一緒にいただきます。パルマンティエとは、細かく切って煮たお肉とマッシュポテトをオーブンで焼き上げる、フランスの家庭料理。とろりと絡み合うなめらかなマッシュポテトとチーズに、噛むほどに染み出す猪肉の濃厚な旨味がじっくりと口に広がります。キャロットラペのシャキシャキ感もうれしいアクセント。普段あまり口にする機会のない味わいを前に、好奇心からかスプーンがどんどん進みます。
ここでは、窓から射し込む陽光を生かして料理や店内を撮影。運河に反射した光は、重ねられた食器さえもドラマティックに魅せる魔法のよう。カメラは、深みのある色合いと豊かな陰影を表現してくれるフィルムシミュレーション「クラシッククローム」に設定。白とグレイッシュトーン基調にした北欧らしい色づかいのシックな店内を、空気感ごと切り取ることができました。水辺で味わうやさしい時間。誰か大切な人とテーブルを囲みたくなる、とっておきのレストランです。
Spot Information
PIGMENT
食事のあとは、海岸通りに面した画材ラボ「PIGMENT(ピグモン)」へ。アートの街として知られるようになった天王洲アイルの発信基地のような同店を手掛けるのは、「寺田倉庫」。建築家・隈研吾氏が内装デザインを手掛けた店内には、稀少な顔料や伝統的な製法でつくられた画材たちが並びます。壁面に並べられた4500色にもおよぶ顔料は圧巻!中でも岩絵具は同じ石からつくられたものでも粒子のこまかさによって色の濃淡や質感が変わってくるのだそう。「ここにはプロの方でも使えるものを中心に揃えていますが、それを覗けば世界にはもっとたくさんの色が存在するので。集めようと思えばもっと増えるはずです」と笑顔で答えてくれるのは、所長の岩泉さんです。
「PIGMENTには、<ラボ/ミュージアム/アカデミー/ショップ>といった4つの機能があります。モノと対峙して自分にとって本当の価値を見極めていただきたいという想いから、商品の陳列にも工夫をしています。<アカデミー>としては、週末にワークショップを開催しています。なかでもオリジナルの絵の具作りは、初心者の方にもとても人気です。たとえば、アート作品に注目が集まることはあっても、その画材まで意識されることはあまりありませんよね。ですが、絵具一つからでもその絵が描かれた時代背景が読み取れたりします。たとえば現代、当たり前の用に使っているチューブ絵具は産業革命の時に確立されたものです。それ以前の時代には大量生産が出来ず、保存も効かないものでしたので、外で絵具を使用して描く事は出来ませんでした。しかし、産業革命によって様々な技術が開発され、絵具が大量生産が可能になり、チューブ入り絵具が完成します。つまり印象派は産業革命のおかげで成り立ったとも言えます。この様に美術に携わっていない方でも、ここに来てもらったことがそういった新しい視点を持つキッカケになれば光栄ですね(岩泉さん)」。
職人によってつくられた筆や刷毛、すずりや動物の皮・骨を原料とする膠(にかわ)など、画材という実用品でありながらも、その形状は惚れ惚れするほどの美しさ。1点1点のもつ手触りまでも忠実に切り取れるように、横位置構図とスクエアを使い分けながら撮影してみました。壁面の顔料は、その多彩さをしっかりと写し出せるよう、フィルムシミュレーションのVelvia/ビビッドに設定して撮影。天井に波打つ竹細工も画に取り込み、ここでしか感じることのできない世界観を写真に納めました。
画材を通して、新鮮な価値観や視点を持つことの楽しみを教えてくれるPIGMENT。「作品を生み出すための画材や素材の価値を知ることは、伝統製法を守ることにもつながる」――。古来から受け継がれてきた製法や職人さんの技術を伝承することもPIGMENTの大切な役割だと考えているそう。歴史と変化が隣り合う街、天王洲アイル。この小さな島で見て、触れて、味わったものたちは、生活のなかで大切にしたいことを間接的に教えてくれているような気がしました。
Spot Information
アートとともに進化し続ける水辺の街・天王洲アイル。穏やかな空気のなかに好奇心をくすぐる小さな発見が散りばめられた、魅力あふれるスモールアイランドです。この週末、ぜひ「X-T20」と一緒に出掛けてみませんか?
今回登場したカメラ
text by 野中ミサキ(NaNo.works)
photo by 高見知香