ロケーションの具体的な探し方とレンズの使い分けについて〜コハラタケルvol.2〜
前回、XシリーズとGFXシリーズのロケーション選びについてお話ししたので、今回はロケーションの具体的な探し方とレンズの使い分けについて話していきます。
また、前回はX100Vの作例がなかったのですが、今回はX100Vをメインで使っています。X100Vの写真が気になる方も作例が楽しめる内容になっていると思いますので是非ご覧ください。
ロケーションの具体的な探し方
・高低差がある(坂道、下り坂)
・レトロな街並み
・路地裏が多くある場所
・路面電車が走っている
・近くに川がある
街撮りに慣れていなかった昔は、上記のポイントが含まれているロケーションを選ぶことが多かったです。最近は街撮りにも慣れてきたためどこでも大丈夫なのですが、苦手な方は上記のポイントが含まれるロケーションを探してみてください。
探し方は単純です。GoogleマップとGoogleストリートビューを活用します。
僕は街撮りの場合、車を使うことはほとんどありません。そのため、駅から歩いて行ける範囲でロケーションを探します。例えばですが……
・Googleマップを見て、歩いて行ける範囲で川が近い駅を探す
・特定の駅を決めたあと、Googleストリートビューで駅周辺の街並みを見る
・1ヶ所でも良いので自分がこの店を背景にして撮影したいと思えるようなレトロなお店を探す
(例:昔からある純喫茶・老舗の駄菓子屋など)
・改めて川周辺をGoogleストリートビューでチェック。どこまで川の近くに行けるのかを確認
最後に書いた“どこまで川の近くに行けるのかを確認”これが重要です。
Googleマップで駅の近くに川があることは確認できたとしても、実際に行くと柵や手すりがあって川の近くまで行けなかったことがあります。
これはもう経験則でしかないのですが、近くに川が流れているところの街並みは写真が撮りやすいです。また、以前とある写真家さんから「困ったときは水場に行くと良いよ」と言われたことがあります。
ゆらめきや水面の光の反射など、水の表現というのは常に動きがあります。実際、僕も川や海を背景にした写真は街を背景にしたときと見え方が全然違いますし、絵になりやすいと感じることが多いです。
また、僕は街での撮影の場合、フルサイズ換算で焦点距離35mmのレンズを好んで使うことが多いです。これには理由があります。
先ほどロケーション選びのポイントで“路地裏が多くある場所”を挙げたのですが、僕は大通りのような広い道よりも路地裏のように狭い道のほうが撮影しやすいと考えています。狭い道というのは下の写真のような道です。
理由は単純で大通りに比べ路地裏のように狭い道は、人が少ないからです。大通りのような広い道だと遠くの景色まで見渡せるため、狭い道に比べて写真に人や車が入りやすくなります。
街撮りは背景に人が写りやすい状況だからこそ、モデルさんだけを撮るのが難しいです。難しいということはほかの人が撮るのも難しいということです。僕は簡単に撮れる写真よりも難しい写真を狙いたいです。そういうこだわりがほかの人との写真に違いを出すと考えています。
とはいえ、大通りで背景に人を入れないことが難しいことに変わりはありません。路地裏のほうが人通りも少なく、写真に写っている人物はモデルさんだけという状況を作りやすいです。だからこそ僕は人や車の交通量が少ない路地裏での撮影を好んでいます。
狭い範囲で広く撮影したい。だからこその35mm
さて、ここまでは大通りよりも路地裏のほうが撮影しやすいことについて説明したのですが、ここからはロケーションによるレンズの使い分けの話をしていきます。
路地裏のような狭い道の場合、どんなにモデルさんと離れようと思っても道幅以上、うしろに下がることはできません。
しかし、このような道幅が狭い状況であっても焦点距離35mm*であれば広い範囲を写すことが可能です。
*35mm判換算(以下、省略)
また、仮に道路全体が広かったとしても歩道側が広いとは限りません。
例えばこちらの写真。立っているモデルさんと木の影が写っている白い建物。本当はこの建物の正面に向き合って撮影をしたかったのですが、歩道の幅を考えると、建物と撮影者である自分との距離を取るのに限界がありました。
僕は広い画角で撮影したかったため、斜めから撮ることでモデルさんとの距離を確保し、撮影することにしました。また奥行き感を出すために右側に歩道の奥も見えるようにしています。
そのほか、高低差がある場所で高い場所から下を見下ろして撮影する場合も35mmが扱いやすいです。
どんなに腕を伸ばして背面液晶を見ながら下にいるモデルさんを撮影しようとしても限界はあります。モデルさんとフォトグラファーが距離を取るのに限界がある場面では、やはり広角寄りのレンズのほうが広い範囲を写すことができるため、街のなかでも路地裏での撮影を好む僕は35mm相当のレンズを使う機会が多いです。
焦点距離35mmと50mmの歪みの違い
人物撮影において50mm*という焦点距離は使いやすいです。とくに撮影に慣れていない人にはおすすめしたい焦点距離です。
*35mm判換算換算(以下、省略)
なぜ、50mmは使いやすいのか。僕が思う特長は下記の通りです。
・周辺の歪みが35mmに比べて少ない
・背景情報を整理しやすい
・寄りの写真の撮りやすさとボケ感
こちらの2枚の写真をご覧ください。
1枚目が50mm相当(『XF33mmF1.4 R LM WR』使用)、2枚目が35mm相当(X100V使用)で撮影しています。並べてみましょう。
何がどう違うのか、これだけだとわからないと思うのですが、実は35mmのほうはモデルさんを中央に配置しトリミングしています。
35mmのような広角寄りのレンズは画面周辺に歪みが生じます。アングルによっても歪みは変わり、とくにローアングルとハイアングルで撮影した場合は歪みが強調されます。
次の写真はトリミングをせず、50mmで撮影した写真を35mmを使って同じように撮ってみました。
50mmの写真と並べてみると……
どうでしょうか?35mmのほうが若干、モデルさんの顔が長く見えないでしょうか。また、背景情報も変わっています。35mmの写真は右上に茶色のビルが写っています。50mmのほうは圧縮効果も相まって、情報を整理しやすいです。
35mmというのは全身が入っている写真や上半身だけの写真は撮りやすいのですが、上の写真のように頭部が写真の周辺に来る写真やモデルさんに座ってもらって画面いっぱいに全身を収めた写真などは撮るのが難しいです。とくに僕は縦写真のときに難しさを感じることが多いです。
そのほか寄りの写真についても35mmより、50mmのほうが撮りやすいと感じます。
先ほども話した通り、レンズというのは基本的に広角になればなるほど歪みが生じます。逆に望遠になればなるほど圧縮効果が働くため、寄りの写真のように画面いっぱいに顔が入る写真では、35mmよりも周辺に歪みが生じにくい50mmのほうが扱いやすいです。
まとめ
・35mmは広い範囲が写るからこそ人通りが少ない路地裏へ
・35mmと50mmレンズの歪みの違いを把握してレンズを使い分ける
・寄りの写真、もしくは頭部が画面周辺にある場合は50mmが◎
大自然に比べて人・車・建物などの情報が入りやすい街撮りでは、各ロケーションに対してのレンズの使い分けが大切です。35mmと50mm、両者の焦点距離の特長を把握して街撮りを楽しんでみてください。