写真のテクスチャー(質感)とは?質感を引き出すコツを解説【Snap & Learn vol.18】

【Snap & Learn】の連載企画では、一般によく知られている写真の撮影テクニックやカメラ関連の専門用語を集め、初心者の方にも理解しやすいように作例やイラストを用いて解説しています。
写真に写る“質感”は、被写体の存在感を際立たせる重要な要素です。木目、布の柔らかさ、金属の冷たさまで、質感を引き出すことで、写真が与える印象は大きく変わります。
本記事では、写真における質感とは何かを解説するとともに、その質感を最大限に引き出すためのテクニックを詳しくご紹介します。あなたの撮影スキルをさらに一歩向上させる、新たな写真表現のヒントになるでしょう。
写真におけるテクスチャーの意味
写真においてテクスチャーとは、被写体の表面の質感や特徴を視覚的に伝えることを指します。
たとえば、花瓶に挿した花を撮影する場合を想定してみましょう。花の薄さやふんわり感、花瓶の滑らかさや冷たさ、テーブルの木目などを、1枚の写真で詳細に捉えられていると、本物を想像しやすく、見る人の視覚だけではなく触覚も意識させ、より魅力的な写真に写ります。
テクスチャーを適切に表現した写真を撮ると、美しいだけの写真ではなく、被写体が持つ雰囲気や物語性を引き出すことが可能です。
テクスチャーを写真で表現する魅力
写真におけるテクスチャーの表現は、平面的なイメージを超え、被写体に奥行きや立体感を与えます。凹凸や表面の質感を捉えることで、被写体がまるでその場に存在しているかのようなリアルさを醸し出すでしょう。
たとえば、荒々しい岩肌の質感を強調した写真が与えるイメージは、自然の力強さや時間の経過です。一方で、絹のような滑らかな質感を写し出す写真は、安心感や温もりといった穏やかな感情を想起させます。
このように、質感の表現は単なる視覚的な要素だけでなく、見る人の感情に直接訴えかけることができます。
テクスチャー撮影を行う際の基本設定やレンズ選び
テクスチャーを引き立たせた写真を撮影するには、カメラの設定やレンズ選びがとても重要です。ここでは、それぞれの設定方法や表現に適した選び方について解説しますので、参考にしてみてください。
絞り値(F値)
絞り値(F値)は、レンズの絞り羽を開閉することで取り込む光の量を調節する設定です。F値を下げると被写界深度が浅くなり、背景をぼかして被写体を際立たせることができます。一方、F値を上げると被写界深度が深くなり、被写体全体にピントが合いやすくなります。
テクスチャーを際立たせたい場合は、F値を上げて被写界深度を深く設定するのがおすすめです。これにより、被写体全体の細部や質感をくっきりと描写することが可能です。適切なF値を設定することで被写体の質感を鮮明に描写することができます。
F値とボケ・明るさの関係を比較!写真の表現への活かし方も解説【Snap & Learn vol.5】
シャッタースピード
シャッタースピードは、撮影時の動きの表現や光量をコントロールする重要な設定です。
速いシャッタースピード(例:1/500秒以上)は被写体の動きを瞬間的に捉え、細部や質感を鮮明に捉えるのに適しています。一方、F値を上げ被写界深度を深くすると光量が不足し、写真が暗くなることがあります。この場合、シャッタースピードを遅く設定する必要があり、手ブレが発生しやすくなる点に注意が必要です。
このような手ブレが発生しやすい場合、使用できる場所では三脚・一脚を準備することで、手ブレを防ぎ、写真の質感をより豊かに表現できます。
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ISO感度
ISO感度は、写真の明るさやノイズに大きく影響を与える重要な設定です。一般的にISO感度を低く設定(ISO100~200)すると、ノイズが少なく、高品質な画像が撮影できます。そのため、テクスチャーの細部を正確に捉える鍵は低ISO感度です。
ただし、最新のカメラでは高感度でもノイズを抑え、質感を美しく表現できる製品が増えています。撮影シーンやカメラ性能に応じて適切なISO感度を選び、質感豊かな写真撮影に挑戦してみましょう。
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レンズ
テクスチャーの表現に大きく影響するのが、レンズの種類です。たとえば、マクロレンズは被写体に近づいて微細な質感を捉えるのに最適で、細かなディテールを鮮明に表現できます。広角レンズは広い範囲を撮影でき、遠近感を強調してダイナミックな構図を作り出します。
また、標準レンズは自然な視野を再現し、被写体の質感をバランスよく表現できるのが魅力です。目的やシーンに合ったレンズを選び、質感豊かな写真撮影に挑戦してみましょう。
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テクスチャー撮影を練習しよう!初心者におすすめの被写体と撮影シーン
テクスチャー撮影は、被写体の表面を意識して練習することで上達します。次に挙げるシーンを参考にして、さまざまな場面で質感を捉える練習に挑戦してみましょう。
自然の風景:岩肌や木々の質感など
自然物の撮影は質感を捉えるだけでなく、構図やライティング、色彩を正確に捉えるなどといった写真の基礎の練習にもなります。木の樹皮や岩の凹凸、砂、葉の表面、水の動きなど、自然界には多様な被写体が存在します。
山や丘陵、海岸、街路樹や公園といった場所で、被写体を手軽に見つけることができるため、どこでもすぐに始められるのが魅力です。
街中の風景:レンガ、ポスターの質感など
街中の風景は被写体が動かないということもあり、構図や設定を調整しやすく、写真撮影の練習として最適な被写体です。たとえばレンガ造りの建物や石畳の道、古びた看板やポスターは独特の質感で写真に奥行き、物語性を加えられます。路地裏や建物の壁、公園の遊具など、身近に被写体も豊富です。
街を歩きながら質感を意識して撮影を楽しんでください。
日常のアイテム:布、紙、金属の質感など
日常にあるアイテムも、家やオフィスで手軽に見つけられ、質感を捉える練習には最適の被写体です。例を挙げると、布地や衣類の質感の柔らかさ、金属製食器の光沢、書籍の繊細な質感を撮影すれば、観察力や撮影スキルを磨けます。
キッチンやデスク、リビングなど身近な場面で質感を意識しながらカメラを構えて、写真表現の幅を広げましょう。
建築物:レンガ、木材、コンクリートの質感など
建築物も、静止しているため構図や設定をじっくり試せる被写体です。レンガや石材の壁、木製のドアと金属のドアノブ、手すりなど、独特の質感があり、陰影を活かした表現がしやすいのも魅力です。
歴史的建造物や今どきのおしゃれなビル、工場や倉庫といった多彩なシーンを探索しながら、建築物の持つディテールと質感を写真に収めてみましょう。
テクスチャー撮影を行う際の3つの注意点
テクスチャー撮影では、被写体の質感を引き立てるための工夫が重要です。この章では、光の使い方や構図選び、カメラの安定性といった3つの注意点を詳しく解説します。
光の角度と強さの調整
テクスチャー撮影では、光の角度と強さが質感の表現を大きく左右します。斜めから光を当てると、影が被写体の凹凸を強調し、質感がより際立ちます。一方で、光が真上や正面から当たると、影が少なくなり、平坦な印象を与えがちです。
また、光の強さを調整することで、被写体の明るさを均一に保ち、過剰なハイライトや暗部を抑えることができます。自然光や人工光を使い分けながら、光を意識した撮影で被写体の質感や魅力を引き出しましょう。
構図や背景の選択
構図や背景の選択は、被写体のテクスチャーを引き立てる重要な要素です。背景がごちゃついていると被写体の質感が埋もれてしまうため、シンプルな背景を選ぶことがポイントです。また、被写体と背景の色にコントラストを持たせることで、テクスチャーを際立たせ、視覚的なインパクトを高められます。
さらに、背景をぼかすことで被写体のディテールを際立たせる効果もあります。これらの工夫を取り入れることで、質感が際立ち、写真全体の完成度が向上します。
カメラの安定性
カメラの安定性は、被写体の質感を正確に表現するために欠かせないポイントです。カメラが揺れるとブレが生じ、細かなディテールが失われてしまいます。そのため、使用できる場所では三脚を用いてカメラを固定するのが効果的です。
また、リモートシャッターやセルフタイマーを活用することで、シャッターボタンを押す際の振動を防げます。さらに、カメラに搭載されている手ブレ補正機能を有効にすることも、安定した撮影に役立ちます。これらの方法でカメラを安定させ、被写体の魅力を最大限に引き出しましょう。
テクスチャーを意識した写真を撮影してみよう
テクスチャーを意識することで、写真に奥行きや物語性を加えられます。光の角度や強さ、構図や背景の工夫、カメラの安定性を意識することで、被写体の質感を最大限に引き出せます。レンガや布、金属など、身近な被写体から始めて、撮影スキルを磨きましょう。
テクスチャーを捉える練習を重ねることで、写真表現の幅を広げ、作品により深みを持たせることができます。
質感ある写真を撮るなら『X-T50』がおすすめ
写真の質感を追い求めたい方には、富士フイルム『X-T50』がおすすめです。ISO125を常用感度として採用しており、低露出になりやすいテクスチャー撮影にも最適です。約4020万画素の高画素センサーにより、繊細な質感も鮮明に表現できます。
ぜひ、『X-T50』を使って印象的なテクスチャー写真を楽しんでください。
