Interview 2022.04.22

【GFXシリーズユーザーインタビュー】最果ての島セント・キルダで、レンズ越しに見つめる豊かさの本質。GFX100Sと写真家・加藤秀

写真家であり、クリエイティブディレクターとして多方面で活躍中の加藤秀さん。これまでスコットランドを筆頭にさまざまな土地を訪れ撮影した作品を多数発表、その多くがGFXによって撮影されています。長らくフィルムカメラのみで作品づくりを続けてきたという加藤さんにとってGFXとの出会いは何をもたらしたのか。4月27日〜5月16日にかけてFUJIFILM Imaging Plaza大阪で開催される写真展『ST KILDA』から作品の一部をご紹介いただくとともに、富士フイルムのラージフォーマット機『GFX100S』で写真作品を撮影することの意義について語ってくださいました。

※写真はFUJIFILM Imaging Plaza東京での展示の様子です。

Interview:加藤秀

――今回はまず加藤さんご自身についてお伺いしたいのですが、プロフィールを拝見したところ実に多彩なご経歴と肩書きをお持ちですよね。大学では博物館学芸員資格を取得されたそうですが、初めてカメラを手にされたのも大学での実習がきっかけだったとか。

そうですね。博物館の収蔵品を撮影するために初めてカメラの操作方法を学びました。結果的に卒業後はデザインの仕事で独立し、現在に至ります。写真を撮る機会が増えたきっかけは演劇や音楽をやっている友人からチラシづくりを頼まれたことでした。自分で撮った写真をスキャンしてそれを基にデザインをしていたのですが、当時はそういった手法をとっている人がまだ今ほどはいなかったんです。その後WEBデザインも手がけるようになるのですが、私にとって写真はあくまでデザイン業をやるうえでの柱のひとつでした。

――では、現在のように作品としての写真を撮影されるようになったのは?

親戚や友人が亡くなることが重なって、写真を撮っていなかったことを後悔した時期があったんですね。その後、東日本大震災が起きて、「大切な人たちをちゃんと写真に残していきたい」という気持ちがますます強くなって。未来がどうなるのかわからない不安を感じると同時に、少しでも役に立つことをしたいと考えるなかで特に人を撮るようになり、より写真作品に傾倒していきました。

――加藤さんは、長らくフィルムカメラで作品撮りをしてこられたそうですね。

「作品はフィルムで」という気持ちが強かったので、大学時代に手にしたときからフィルムカメラを数台にわたり愛用していました。もちろん仕事ではデジタルカメラを使いますけれど、作品となるとデジタルでは納得のいく画にならなかったんです。かといって、フィルムカメラは新製品も出ませんし、なんとか作品づくりにデジタルを使えないかと模索はしていました。その中で、たまたまGFX 50Sを使っている知人の勧めもあり、試しに使ってみようと。その時、初めてデジタルカメラで自分の思う画を撮れるかもしれないと思えたんです。

――そう感じられた要因とは、なんだったのでしょうか?

センサーサイズの大きさがもたらすグラデーションの美しさ、階調表現の豊かさ。ここに尽きます。単純な画素数の大きさではなく、まず階調表現の美しさに惚れて、使うようになりました。

――その後、2021年春に『GFX100S』が新製品として登場しました。そもそもGFXを手にしたことで作品づくりや視点に変化などはありましたか?

▲GFX100S

レンジファインダースタイルのカメラをずっと使っていたので、そこから幅を持たせてくれたのがGFXだと思っています。もともと人物や人の暮らしを撮影するというスタイルだったのですが、GFXはさらに風景であるとか自然のダイナミックさを撮影するのに適したカメラで、そういった撮影も増えました。

――先ほど、「階調表現に惹かれた」というお話がありましたが、GFXの表現力という点で富士フイルムの色表現についてはどう捉えていらっしゃいますか?

私の場合、作品制作の際はすべてRAW現像を行うので結果的にフィルムシミュレーションは使っていません。けれど、撮影の時点で自分の作品をどのような世界観で表現していくのかを考えるうえで、フィルムシミューレションが反映されたプレビュー画面にとても助けられています。フィルムシミュレーションを変えて見ることで「こんな表現も出来るんだな」とイメージ出来る。そうすると、次のショットはどう撮ろうかとその場でフィードバックできるんです。そういった意味でフィルムシミュレーションの必要性を感じています。逆に、『X-E4』を使って日常を撮るときにはフィルムシミュレーションを使って楽しんでいます。主にPROVIAやクラシッククロームを使っていますね。

――せっかくお話が出たので、ぜひX-E4を手にされた理由についても聞かせてください。

▲X-E4

GFXはレンズも含めるとそれなりの大きさと重さになるので、日常生活で常に持ち歩くのはあまり現実的ではありませんよね。ランチを撮ったり、出先の雑貨屋さんで見つけた素敵な器を撮ったり、そんな日常スナップには小型・軽量な機種の方が断然いいわけで。そういったカメラも欲しいなと思っていた時にX-E4が発売になると知り、確か発売日に買いました。これもまた以前使っていたレンジファインダーカメラの話になるのですが、X-E4は形といい大きさといいそのカメラにすごく似ているんです。もちろん新しい機能が満載のX-E4とそのフィルムカメラを同列には扱えないですけれど、手にした感じが自分にとって慣れ親しんだカメラに近いということで、すぐに気に入ってしまいました。日常でも旅先でもバッグに忍ばせているので、一番出番が多いカメラではありますね。

X-E4 /XF18mmF2 R /F4.0 /1/1000秒 /ISO160
フィルムシミュレーション:クラシッククローム

――加藤さんはご自身の作品づくりにおいてGFX100Sで撮影するという行為にどんな意義を感じていらっしゃるのでしょうか?

GFX100Sについては最初、これまで愛用してきたGFX 50Sとセンサーサイズが同じなので、画素数が増えたという点が果たして私の求めるグラデーションの美しさに寄与するのか?と懐疑的だったんです。ただ実際に使ってみた感想として「GFX 50SとGFX100Sとでは、まったく別のカメラだ」という印象を抱いています。もちろんフィーリングもありますが、作画能力が別次元だなと。一番重視していたグラデーションや階調は格段に美しくなっていると思いますし、GFX100Sで撮る画はGFX100Sでしか撮れない画なんだと感じています。

フィーリングとしては、やっぱり手ブレ補正がすごく効いてくれるので、これまで撮れなかったものが撮れるようになりました。私の場合は手持ちで撮ることが非常に多いので、撮影出来るものの選択肢が増えたという点は、作品づくりにおいて非常に大きなことだったと思います。

――GFX100Sの手ブレ補正は、セント・キルダの撮影でも力を発揮したそうですね。

セント・キルダでは島の外側はボート上から撮影するのですが、常時5m程の波が起きていて、乗っているボートも小さいので、しっかり船を掴んでいないと危険なんですね。左手で船を掴んで、右手にカメラを抱える。そういったシチュエーションでも撮影出来たのはGFX100Sだからこそですし、非常に感謝しています。

――特殊な環境での撮影経験があるからこその強い説得力を感じますし、そうした片手での撮影が余儀なくされる、過酷な状況でもしっかり撮影ができるという点にGFX100Sの真価が表れているように思います。

片手でも構えられる、という点に関してもGFX100Sのメリットかなと。GF100-200mmなどの大きいレンズを着けるとかなりの重量になってしまうところ、グリップ感や全体のバランスとしてGFX100Sであればそれほど無理がないと思っています。セント・キルダの撮影でもほとんど『GF100-200mmF5.6 R LM OIS WR』を使いました。というのも、時間に制限がある中で山を登ったりもする撮影だったので、持って行くレンズの本数を絞る必要があったんです。それに加えて『GF32-64mmF4 R LM WR』、と『GF23mmF4 R LM WR』を持って行きました。

――“地の果て”とも称されるセント・キルダの景色が加藤さんの視点をもってGFX100Sによって残されることに、壮大なロマンを感じています。今回の展示作品について、見どころや加藤さんの想いを教えていただけますか?

まずセント・キルダは、スコットランド本土の外側にあるヘブリディーズ諸島のさらに外側にある西の果てにある島。ここには5,500年ほど前から人が暮らしてきたという歴史があるのですが、周りの海が非常に荒れるので人が近づくことも離れることも出来ず、現在でもアクセスが難しいため、まず行けたこと自体が幸運だと言われる島なんですね。英国で唯一の複合遺産でありながら観光誘致はおろか人も住んでいない、日本ではほとんど知られていないこの島を紹介したいという想いがありました。

GFX100S /GF32-64mmF4 R LM WR /F4.0 /1/500秒 /ISO125

セント・キルダは92年前に全島民が避難して完全に無人になったのですが、生活用品や建築物といった人々が暮らしていた跡が残っているんですね。そこに想いを馳せると、今の豊かさとか人生の幸せって一体どういうことなのかなとすごく考えさせられました。もうひとつの視点としては世界遺産とは何のためにあるんだろうなと。観光誘致や地域振興が目的とされる中で、セント・キルダは純粋に島を守ることに徹しているんです。世界遺産とは一体何のために登録するのか、セント・キルダの展示や写真集を通して、そういったことを考えるきっかけになればいいなとも思っています。

GFX100S /GF32-64mmF4 R LM WR /F5.6 /1/1000秒 /ISO200

――そうした提起や歴史背景について考えることが、作品の解像度をさらに上げてくれるのだとお話を伺っていて感じました。さらにこの先、どんな世界を見せていただけるのか、楽しみです。

スコットランドの島に関してはここ数年で重点的に訪れたので、再びスコットランド本土に戻って、ハイランド地方をより深く探っていきたいと思っています。日本は明治維新以降スコットランド文化の影響を実は多大に受けてきた国なので、そのオリジナルを探る旅というのは私の大きな命題でもあるんです。『蛍の光』の曲やウィスキーなど、私たちにとって馴染みの深いスコットランド発祥の文化はいくつもありますし、どこか日本人の心の原点にも通じるようなものがスコットランドにはあると思うので、これからもそこを追い求めていきたいと思っています。

text by 野中ミサキ(NaNo.works)
Photo by 大石隼土

Information

写真展 『ST KILDA』 

期間:2022年4月27日(水)~5月16日(月)
時間:10:00~18:00(最終日は14:00まで)※毎週火曜休館

※当面の間、新型コロナウイルス感染防止などの観点より営業時間を短縮とさせていただきます。

会場:富士フイルムイメージングプラザ大阪 ギャラリー
住所:〒542-0076 大阪府大阪市中央区難波2丁目2−3 御堂筋グランドビル 2F

※写真展・イベントはやむを得ず、中止・変更させていただく場合がございます。予めご了承ください。

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