【Xシリーズユーザーインタビュー】ミュージシャン・安藤康平(MELRAW)と『X-Pro2』 循環する、音と写真
ジャズ・サックス奏者として確立されたキャリアを軸に、ときにプレーヤーとして、ときにアーティストとして、そしてプロデューサーとして、その多角的な才能で異彩を放つMELRAW(メルロウ)こと安藤康平さん(@koheisax_melraw./@koheiphoto_)。米津玄師やKing Gnuらシーンの最重要アーティストからの信頼を集めるなど、ジャンルやシーンを横断する音楽活動のかたわら、長年フィルムカメラを愛用しライブや旅先、日常の風景を撮り続けてきました。そんな安藤さんが2018年から“相棒”として使い続けているのが『X-Pro2』。今回は、その使い心地やレンズ選びへのこだわりとともに、自身にとっては“循環するもの”と語る音楽と写真、その視線の先を紐解いていきます。
Interview:安藤康平(MELRAW)
撮りたいと思う挙動に応えてくれる
感覚を磨き直すきっかけになったカメラ
──安藤さんは、ミュージシャンとして活躍される一方で、長年写真を続けていらっしゃいますよね。とくにフィルムカメラを長く愛用されてきたそうですが、フィルム撮影のどんなところに惹かれたのでしょう?
昔って、現像に1週間弱くらいかかっていたじゃないですか。子どものころ、家族旅行で父親が撮った写真が上がってくるのにちょっと待たされる、あのワクワクして見る感じがすっごく楽しかったんです。そこが、原体験ですね。自分で撮るようになって最初のうちは、中古で買ったフィルム一眼カメラを使っていたんですけど、楽器とあわせると持ち歩くのが大変で。そこで手にしたのが、コンパクトでフラッシュもついている『NATURA CLASSICA』でした。
──持ち歩きのしやすさ、というのが重視するポイントのひとつだったんですね。そして現在は、ミラーレス一眼カメラ『X-Pro2』を愛用中とのこと。同機を手にしたきっかけは?
一度フィルム一眼から離れて、「デジタルのフルオート楽ちん!」みたいなところから、もう一回自分でいろいろ設定を触りながら撮りたいと思っていたタイミングで出会ったのが『X-Pro2』でした。フィルムの値段がだんだん高くなってきたという背景もありますけど、コンパクトで所有欲も満たされるものがないかなと探していて、まず見た目のカッコ良さに惹かれましたね。『X-Pro2』一択でした。
手にしたときのサイズ感もちょうど良かったんですよね。あまりに小型軽量だと構えている感じがしないし、デカすぎても扱いづらくなるし。防塵防滴というところにも安心感がありました。フルサイズが良いかなと何年に1回かは思うんですけど、ISO感度も高く設定できるのでライブ会場の暗いところでも撮れますし、不満がひとつもないんです。
──実際に使い続ける中で、『X-Pro2』への愛着はどんなところに感じていますか?
やっぱり一番は、この角張ったデザインやサイズ感。傷がついて塗装が剥げていく感じも好きですし、指でダイヤルを動かして操作するひと手間も含めてちょうどいい愛着があります。ガジェットって、洗練されていくと物理的なボタンや操作部がどんどん無くなるじゃないですか。でも、このカメラはダイヤル類もしっかりついていて、ビューファインダーの切り替えレバーもすごく面白い。自分の撮りたいと思う挙動に応えてくれるし、ちゃんと指を動かして操作しないと撮れないぞという、あえて難易度の高いほうに自分を追い込んで遊べるところが気に入っています。ワイヤレスで画像をスマホにパッと転送できるので、このカメラを購入した当時は、「こんなに便利な時代が来たのか!」と感動しましたね。
制約をあえて楽しむ
フィルムシミュレーションを使って“フィルムカメラ遊び”
──『X-Pro2』を手にしたことで、視点や撮影スタイルに変化はありましたか?
連写もしないので、フィルムカメラを使っているときの感覚とあまり変わらないかもしれないです。ただ、フィルムのときって、ムダ打ちしたくないから露出計代わりにデジカメで一回測ってからフィルムカメラで撮る、なんてことをやっていたんです。『X-Pro2』を使うようになってから、そういった勉強をし直すようになりました。自分にとっては、もう一度感覚を磨き直すきっかけになったカメラだなと思っています。
──もともとフィルムカメラに親しんでいたことも踏まえ、富士フイルムの色表現にはどんな印象をお持ちですか?
マットにもなるし、淡くもなる。とくに、今付けている『XF23mmF2 R WR』のレンズだと、すごくマットに撮れる印象があって。良い意味でべったり、こってりしているところが好みです。漠然とですけど、富士フイルムのカラーって独自の匂いみたいなものがありますよね。
──フィルムシミュレーションについては、いかがでしょう?
たとえば『ACROS』に設定して、“モノクロフィルムを入れた日”という体で仮想のフィルムカメラ遊びをしています。コントラストが高いモノクロに設定して「今日はこれで街に行くぞ」という使い方が面白くて。ISO感度もあえていじらず『写ルンです™』みたいに27枚撮り切るまで設定を変えない、みたいな制約を作って楽しんでいます。ただ、『クラシックネガ』はかなり羨ましいですね(笑)。『FSレシピ』もよくチェックしているんですけど、良いなと思ったら『クラシックネガ』だったっていうことが多くて。『X-Pro2』には搭載されていないので、興味があります。
※写ルンですは、富士フイルム株式会社の登録商標または商標です。
──撮影後のレタッチ等は、どのように?
トーンカーブで幅を狭くしてみたり、いろいろ試すのが好きですね。「何をどうすると、どう変わるのか」を自分で理解したくて実験的にやっています。昔のトイカメラみたいな壊れた色の表現をデジタルでどう再現するか試してみたり、好奇心でいろいろ触っています。
──所有されているレンズの使い分けについてはいかがですか?
フジノンレンズは『XF23mmF2 R WR』と『XF18mmF2 R』を持っています。国内旅行のときなんかは、カメラバッグに数本入れて付け替えて遊んだりもしますけど、基本的には「今日はこの画角」と決めて撮ることが多いです。「食事のとき、わざわざ立ち上がらないと入らないような画角だな」と思っても、そういう制限を設けて撮る。「今日何着ていこうかな」と服を選ぶ感覚に近いですね。楽器を持っていて片手が空いていないときもあるので、片手でサッと撮れるようにオートフォーカスが効くレンズを付けていることが多いです。
──今後、中望遠などの異なる画角のレンズを試してみたい気持ちは?
今よりもっと中望遠寄りで、ポートレート向きの70mm〜80mm(35mm判換算)あたりの単焦点とか、切り取り感が強くなった方が「何を選んで、何を表現するか」という作家性みたいなものは出てきそうだなとは思っていて。スナップで広い画角で撮るのとは別の勝負として、興味はありますね。今は、「今日はこのレンズじゃなかったな」と思うことも含めて、制約の中でどう撮るかを楽しんでいるところです。
互いに影響し合うもの
『X-Pro2』が可視化する音と視点の循環
──2018年に『X-Pro2』を購入されてから、後継機や他モデルに買い替えずに使い続けている一番の理由はどこにあるのでしょうか?
APS-Cサイズとしては、この『X-Pro2』で自分にとって必要十分で、取り回しのいい相棒として完結している感覚があります。ISO感度も12800とか高いところまでいけるので、ライブ会場とか暗いところでも問題なく撮れるし、持ち歩くにも苦にならないサイズで撮れるものはちゃんと撮れるというところが強いです。壊れない限りは使い続けたいと思えるくらい、モノとしても好きです。
──そういった思い入れや価値観は、楽器にも共通する部分があるのでしょうか?
ガジェット好きなので、新しいものにはすぐ手を出すんですけど、やっぱり“相棒”を持つのも好きなんですよ。それに巡り合うまでは右往左往しますけど、「あ、これだ」と思ったらわりとそこから動かないタイプなので。楽器も、新しいものが出てくる一方で、自分が高校生のときから使っているサックスというのがやっぱり一張羅というか。そういう意味では、楽器も相棒だし、カメラも相棒という感覚です。「自分は今これでもう大丈夫」という安心感があるんだと思います。
──ふだん音で表現なさっている安藤さんの感性は、写真にどう表れていると感じていますか?
写真家の方の個展なんかに行くと「これは自分にはできないな」と思うことが多いです。理屈っぽい性格なので大胆なことができなくて、構図も意識してグリッドを出していなくても数学的になっていたりして。どうしても街のスナップになるし、表現というより自分の視点を切り取りしている感覚ですね。
──では、ご自身の音楽と写真に共通点やつながりは感じますか?
昔撮った写真を見ていると「このときは病んでるな」とか「ご機嫌に商店街を撮ってんな」とか、そのときの自分の状態がなんとなくわかるんですよね。それって、念みたいなものも一緒に記録されているからだと思うんですけど、音楽も写真も“身から出たもの”だし、共通しているというよりは影響を与え合うイメージがあります。エモい写真を撮っていたころって、やっぱりそういう情景感のある音楽を聴いていたし、そのとき自分の目に映っているものと音楽がリンクするような感じはずっとありますよね。写真が音楽に反映されたり、その逆もあったり。自分の中で循環するもの、みたいな感覚です。
text by 野中ミサキ/NaNo.works
photo by Kana Tarumi






























