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Interview 2026.08.24

【GFXシリーズユーザーインタビュー】写真家・鳥居洋介 自分が撮りたい写真を、自分の意志で形にするために

ミュージックシーンを主戦場に、商業撮影からアート作品の制作まで幅広く手がける写真家・鳥居洋介さん(@hurry)。個性を際立たせるアーティスト写真、記録性とアート性が同居するライブ写真、高品位に徹するクライアントワークなど、さまざまなシーンでGFXシリーズを愛用しています。どんな撮影であっても、シャッターの瞬間には自分自身が楽しむこと、そしてプロとして目指す結果となるように努めているそうです。そんな強い信念に応えてくれる相棒が『GFX100S』と『GFX50S II』。鳥居さんが絶大な信頼を寄せている理由を伺いました。

Interview:鳥居洋介

楽器の代わりにカメラを持って。
軽音楽部で始まったライブ撮影

──写真をはじめたきっかけを教えてください。

大学1年生のときに、祖父からフィルムの一眼レフカメラをもらったのが最初です。そして大学入学後、軽音楽部に入り仲間を撮り始めました。僕は楽器の才能がなくて……ライブ写真やアーティスト写真を撮ることを目的とし、写真サークルと兼任で在籍していたんです。いまも音楽メディアの撮影仕事がメインですが、子どもの頃から音楽には親しんでいて、家にはギター、ベース、ピアノなどさまざまな楽器があるという環境で育ちました。

大学時代は『写ルンです』全盛期。逆にフィルムしかなかった時代です。写真サークルではモノクロプリントしかできないので、カラー現像とプリントを覚えられるから、また安くできるからという理由で町の写真屋さんでバイトもしていました。

──プロの写真家になろうと決意したきっかけは?

大学を卒業して就職もしましたが、4ヶ月で辞めまして……。そのとき、辞める理由がないと辞めさせてもらえなかったので、プロの写真家になるから辞めますと(笑)。でも、写真は好きでずっと続けていたんです。脱サラをしたのは22歳のとき。その後、地元の名古屋でバイトをして軍資金を貯めて、ハイエースに荷物を詰め込んで東京に来たときには25歳になっていました。当時はスタジオに入りたくてもウェイティングリストがあるくらい人気で難しく、フォトグラファーのアシスタントになるにもスタジオを1年経験したらまた声かけてとかばかり。

そんなときに偶然知り合ったフォトグラファーの方に直属アシスタントの次くらいのポジションで使ってもらえることになったんです。その方はフィルムからデジタルへの過渡期に、いち早くデジタルに移行していて。当時フィルム中判しか持っていなかった僕も、すぐにデジタル一眼レフとPCを購入し、デジタルを一から覚えていきました。アシスタント時代はポスティングのバイトをしていましたし、夜のライブハウスやクラブでスナップを撮って、日銭を稼いでいました。プロとして安定するまでは、かなり泥臭く生きてきたほうだと思いますね。

『JOHN SMEDLEY×ŌME Special Collaboration』KV
GFX100S /1/1000秒 /ISO800 /ノスタルジックネガ

──富士フイルムのカメラとの出会いは?

フィルム時代から中判カメラが大好きで、富士フイルムの中判フィルムカメラ『GX680』などは使っていました。デジタルに移行してからも、財産を掻き集めてまで買った中判のデジタルバック(※中判カメラに取り付けるデジタルセンサー)とフルサイズ一眼レフという組み合わせ。もっと小回りの利くカメラが欲しくなり周囲に聞いていたところ、『X-Pro1』を使っている友人に薦められたのが『X-Pro』シリーズ。他にもレンジファインダー機などが候補にありましたが、実際に使ってみてしっくりきたのは『X-Pro2』で、仕事以外の写真を撮るというときの愛機になりました。3、4年くらい使ったんじゃないですかね。途中で『X-Pro3』も発売されましたが、僕にとっては『X-Pro2』こそが完璧。『X-Pro3』は少しだけプロユースの武骨なカメラから、フィルムへのオマージュのような理念のようなものが前に出てきた気がしたんですね。本当に生意気な言い方ですが、そういうのは僕はいらない。だから『X-Pro2』にこだわっていたんです。

『GFX100S』『GFX50S II』とオールドMFレンズの相性の良さ

──フィルム時代から中判カメラの高画質は特別なものだったわけですね。その中でGFXシリーズを手にした理由とは?

高解像度のカメラがとにかく必要だったからですね。コロナ禍の頃くらいに、現代アートの作品をデータ化するという仕事があったんです。当時は現代アートバブルだったのと、僕の周囲にも現代芸術家が多くて。キャンバスの質感や色を忠実に再現するには、解像度は高ければ高いほどいい。ときには10mに引き伸ばしたいというオーダーもあり、これは『GFX100S』の1億画素こそが最適だなと思いました。

──中判カメラを使い続けてきた身から、『GFX100S』にどのような感想を持ちましたか?

正直に言ってしまうと、拡張性という面ではデジタルバックに分があるなと。僕は6×4.5の中判カメラにデジタルバックを付けていますが、その機能性や感触はやはり素晴らしいです。ただ、『GFX100S』は中判カメラとしては驚くほど軽く、素晴らしい解像度があり、バッテリーの持ちも良く、そして何よりも純正レンズのキレも素晴らしい。GFXとGFレンズの組み合わせは、他のメーカーの純正同士の組み合わせとは全くの別物で、嫌みのないキレの良さというか、ちゃんと奥行きもあるキレの良さがあると感じています。

──いまは『GFX100S』に合わせて『GFX50S II』をお使いですが、愛用しているレンズを教えてください。

これが矛盾してしまうんですが、実はメインでは6×7の中判フィルムカメラ用レンズをマウントアダプターを介して付けていることが多く……。本当にすみません! なぜかと言うと、カメラは解像度が高くキレがあるのに対して、6×7用レンズは古いため解像度は低いんですね。この解像度の違いが良いバランスの描写を生む感覚があるんです。レンズの解像度の低さが単純に眠い描写にならず、良い意味での甘さやボケ味のある生っぽい描写にしてくれて、僕が大切にしている立体感を生んでくれるなと。

GFX100S /1/1000秒 /ISO400 /モノクロ

GFX100S /1/320秒 /ISO400 /モノクロ

純正レンズは破綻のない描写が求められるときにはとても頼りにしていますが、フィルムの感覚を意識しているわけではないものの、デジタルデジタルしていない写真に落とし込めるところが好きなのかもしれません。あと『GFX100S』と『GFX50S II』はどちらもボディ内手ブレ補正が搭載されていて、焦点距離が200mmや300mmの長玉のMFレンズでもスローシャッターを使えますし、かといって補正しきれていないくらいのブレは残り、スタビライズされすぎていない感じも良いんです。GFレンズを組み合わせたときの良さももちろんありますが、現時点での僕にとってはこの組み合わせがベストです。

GFX100S /1/1000秒 /ISO400 /モノクロ

プロの撮影現場で活きるGFXの階調性能

──音楽関連の撮影は人物からライブ写真まで多岐に及びますが、GFXシリーズはどのような場面でその強みを発揮しますか?

あえてライブ撮影で『GFX100S』を使うことはあります。ドーム球場など大規模な会場でGFレンズと組み合わせることで大胆なクロップにも耐えられますし、逆サイドの客席のお客さんまで全員写っているというような解像度を活かすこともあります。アーティストのポートレートはほぼ全てGFXシリーズですね。GFXシリーズを使っているときはほぼ何も考えていないというか、ただ自分が気持ちよく撮影に没頭できている感覚があります。仕上がりも想像はついた中で撮っていますし、思った通りに撮ることができます。

▲『川谷絵音』
GFX100S /1/60秒 /ISO320 /ACROS+R

▲『The Novembers』
GFX100S /GF32-64mmF4 R LM WR /F8.0 /1/125秒 /ISO100 /クラシックネガ

ちなみにフィルムシミュレーションは『ノスタルジックネガ』を使うことが多く、その色をベースに編集ソフトで微調整をして仕上げていきます。カメラ内の画質設定はさほどいじりませんね。『ノスタルジックネガ』は色転びをしながらもコントラストは低めで、なんやかんやフィルムトーンが感じられて好きですね。デジタル特有の“ドンシャリ(音楽用語で、低音域と高音域が強調された音質)”な写りは好みではないですね。

▲『森山直太朗』
GFX100S /GF45-100mmF4 R LM OIS WR /F8.0 /1/100秒 /ISO640 /ノスタルジックネガ

──その他、GFXシリーズの高画質の恩恵はありますか?

もちろんあります。とにかくべた褒めしたいところは、GFXシリーズの『ダイナミックレンジ』の広さです。咄嗟の撮影で露出オーバーになってしまってもデータが戻ってくる。後処理はあまり好きではないですが、ものすごく助かりますね。情報量の多さはGFXシリーズの最大の強みで、他のカメラでは太刀打ちできないところ。僕はとにかく“自分が撮りたい写真を自分の手で撮りたい”という意志があり、これに最も適しているから富士フイルムのカメラを愛用しているんです。ブランド価値のあるカメラを使い、そのカメラで撮れる写真を撮りたい、という感覚とは違うんですよね。さまざまなジャンルの写真を撮っているからこそ、そう思うのかもしれません。

──目指す写真を撮ることができる最高の道具ということですね。『GFX100S』と『GFX50S II』の使い分けはどのようにしていますか?

雑誌の撮影など解像度がそこまで必要のない仕事では、撮り回しや作業効率を考えて『GFX50S II』。高解像度が求められ、トリミングが必要になりそうなときは『GFX100S』を使いますね。レンズとの組み合わせも、そのときの撮影内容や状況に応じて変えています。最近では『GF45-100mmF4 R LM OIS WR』や、昨年秋に購入した『GF20-35mmF4 R WR』を使う機会も多く、それぞれ必要な画角や表現に合わせてボディとレンズを選んでいます。

▲『The Novembers』
GFX100S /GF45-100mmF4 R LM OIS WR /F7.1 /1/125秒 /ISO640 /モノクロ

被写体への眼差しの変化とレンズの画角の相関関係

──いま富士フイルムでは『愛おしさという哲学。』というブランドタグラインを掲げ、撮影者が愛おしく感じる瞬間の気持ちを大切にしたブランディングを進めています。鳥居さんにとってシャッターを切る瞬間、被写体への眼差しはどのようなものでしょう。

シャッターを切る瞬間は単純に直感。でも、正面で物事を見るということができないひねくれ者なので、どこかズレた瞬間に心が動いているのかもしれません。見た人が全員同じ答えになるような写真にはしたくないというか、余白が欲しいというか。写真に正解なんてないと思っています。ただ、被写体に対しての距離感は最近変わってきていて、それはレンズ選びにも現れています。これまでは50mmや85mmが好きで、少し距離のある中で達観して撮影していたと思います。でも、子育てを経て、人生経験も積み重ねた結果、人生に達観しきれなくなってきていて。写真は、他人の人生を記録するわけじゃないですか、人生の一瞬を。スナップでもそうだし、そんな重要なことをしているのに達観しているのは無責任だなと。人と向き合うことを意識するようになってから、28mmの広角レンズを愛用するようになってきました。グッと近づいて撮るか、めちゃくちゃ離れるか。

──描写ではなく精神面の変化から広角レンズを愛用するようになるというのはとても興味深い話です。それを踏まえて、今後採り入れていきたい機材などはありますか?

28mm相当のレンズが付いている『GFX100RF』はとても気になる存在ですね。ここのところ仕事でアジア各国を回っているのと、今年は初めてメキシコにも行くので、海外の撮影のメインカメラとして導入を検討しています。いまの僕のスタンスを考えるとベストチョイスな気がしますよね。見た目も含めていいよなあと思っています。

text by 鈴木文彦

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