旅を暮らしの延長線に──『GFX100RF』『X half』と、ただの旅行記 モロイ ユウダイvol.2
静かな帰路、疲れ果てた旅行の帰り道はどこか心地のいい時間が流れていた。
2026年は間違いなく、最も新幹線に乗っている回数が多い年だと思う。数年前までは新幹線に乗ることへの特別感や旅行の始まりを語る上で情緒的な乗り物のようにも感じていた。今では車窓を眺めることも少なく仕事現場へ向かうための乗り物になってしまった。
でも今回は違った。友人に会いに、そして泊まりたかったホテルへ泊まった。
期待感を持って乗る新幹線は本当に同じ乗り物なのかと疑いたくなるほどに心が躍る。ただでさえ速い乗り物も今日だけは2倍以上のスピードで走っているように感じる。駅弁を買わなかったことだけが心残りだ。
今回の那須旅行は2泊3日、初日のホテルは駅近で利便性の高い場所へ泊まることに。翌日はずっと泊まりたかったホテルへ移動する計画だ。例のごとく目的地に到着したらまずはホテルへ荷物を預けに向かう。この街の人たちは基本的にいつも、どこでも優しいという認識でいる。ホテルの受付のおばちゃんもおばちゃんらしい優しさを持っていて、地元以上の温もりを早速感じた。人の優しい土地は何をしても、どこへ行っても大体楽しい。これは旅行あるあるのひとつだと思っています。
旅行の醍醐味は人それぞれだけれど、普遍的なものとして“食”と“お土産”は欠かせないものだと自分勝手に決めつけている。初日はこれらを満たすことに成功した1日を送ることができた。夜はその街にあるビストロ系のご飯を食べ、同行者は初日からお土産の確保を完了している。もう、この旅行はやり尽くしている。カフェも雑貨屋さんも回りに回ることができた。
ふと、振り返ると最近の旅行で失敗をしていない。そもそも、旅行に失敗なんて存在しないと思うが、一方で予約したホテルが取れていなかった/公共交通機関が動かない/何かしらのトラブルに見舞われる、などのことが起きると、0.4秒くらいは心が上下左右に揺れ、「あ、これはミスったかも……」と振動が起こる。ただ、最近はそれすら起こらない。自分がコントロールできる範囲のことはもちろん、コントロール外のことも。いつか何かしら大きなトラブルが起こるのではと少し怯えながら、起きたっていいかとどこか他人事のようにも思っている。
初日を終えて2日目を迎える。
朝から友人と合流し、少しお家にお邪魔する。正直な心情を文字にすると、自宅よりも居心地が良く何時間だって滞在できてしまう空間だ。もちろん、置かれているインテリアに住む人たちの思想が表れていることや、家そのものの佇まいが素晴らしいという視覚的に入る情報によって居心地の良さが生まれている点もあるが、それよりも住居人の人柄や生き方が居心地のいいと感じる成分のほとんどを占めている。
人それぞれ落ち着くことのできる空間にバラつきがあるのは当然だが、自分の場合は那須の友人邸ほど一生いたいと思える家はない。いつもその人たちにしか写すことのできない空気を纏いながら、その人たちだけのペースで生活をしている。結局のところ、家というものが外の世界との境界線となり、何者にも揺らがせることのできない空間としての強さに、居心地の良さを感じていると思う。
そんな素敵な家でキャットとベイビーに挨拶をかわして、お茶を満足するまで飲み干してから友人に那須を案内してもらった。
木々によってできたトンネルを抜けるとこれまた佇まいのいい建物が現れる。今日のランチは那須で一番におすすめできるというお蕎麦屋さんだ。
整理券を受け取り、時間が来るまで食べられないお蕎麦を待ちながら近くの沢に向かう。那須は基本的に駐車料金がかからないが、この沢は1,000円を払わなければならない。なぜなのか分からなかったが、夏になるとその理由がわかるらしい。
海の近くに住み続けて20年以上経つせいか、住む街に海がないという環境を上手く想像できない。何かあれば海を眺めに行くし、何もなくとも海を眺めにいく。きっと自分にとっての海のような場所がここに住む人たちにとっての沢や川、山に当たるのだろうと考えながら、透き通って底まで見える沢の水でぱしゃぱしゃしてみた。とてもつめたい。
この大自然の中、同行者はすごく違和感のあるもので写真を撮っていた。よく見るとカメラにしては明らかに大きいが、沢の流れや木々の揺れとともに鈍いシャッター音が聞こえてくる。覗き込んでみるとシールでデコられたゲーム機で写真を撮っていた。20代半ばの自分にとっては世代ドンピシャ、少し心が浮ついた。さすがすぎる。そんなこんなで1時間以上の時間を沢で過ごしていたら蕎麦を食べる時間がやってきた。
店内は外見同様にお蕎麦屋さんらしからぬ店内をしていた。そしてとんでもなく美味しかった。
それからは車でしか行けないような素敵な雑貨屋さんや、お土産屋さんを回ってもらい満足度の高すぎる案内をしてもらった。夕食で訪れたカレー屋のオーナーさんらしき方もお人柄が素敵すぎて本当にいい土地だと2日目の最後に改めて実感させられた。
ここまでで分かるようにこの旅行一番の目的とも言えるホテルには22時過ぎに到着した。あまりにも那須を満喫したため、ホテルに着く頃には疲れ果てていた。あれほど泊まりたかったホテルは朝起きてからすぐにチェックアウトをするだけの寝床になってしまった。
ただ、どこかに強い満足感が残っている。買いたかったお土産、行きたかったあの場所、多々目的は散らばっているけれども旅行を共にしたい人と、旅行先で会いたい人に会えればこれ以上のことはない。
パンを買って帰ろう。
帰りのバスには自分たちしか乗っていない。補装されていない道によって生じる揺れが心地いい。車窓から見る那須の風景は新緑が目立つ。今年も夏がやってきてしまう。あまりにも静かな帰り道に旅行の余韻だけが残されている。
今回登場したカメラ
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