【Xシリーズユーザーインタビュー】フォトグラファー・伊藤徹也とXシリーズ 絶対現場主義のプロが『Xシリーズ』を手に旅する理由
日本大学藝術学部写真学科を卒業後、フリーランスのフォトグラファーとしてキャリアを積み上げ、第一線で活躍を続けている伊藤徹也さん(@ito_tetsuya)。カルチャー誌、ライフスタイル誌など数々の主要雑誌・WEBメディアで旅、食、建築、ポートレートなど多岐にわたる撮影を手掛け、その柔軟かつ確かな現場力で多くの編集者やクリエイターから絶大な信頼を寄せられています。
特定の師匠を持たず、泥臭く現場で叩き上げられてきた伊藤さんのスタイルは、いかにして構築されたのか。そして、過酷な旅取材の相棒として富士フイルムXシリーズを選ぶ理由とは? 現場を“面白がる”独自のプロ意識から表現の根底にある“儚いものへの愛おしさ”まで、伊藤さんの撮影の流儀に迫ります。
Interview:伊藤徹也
現場で磨いた対応力と人間力
愚直な日々の先でたどり着いた現在地
──多方面で長年ご活躍なさっている伊藤さんですが、まずフォトグラファーとしてのご経歴から聞かせてください。
日大藝術学部写真学科で写真を学びましたが、卒業後はとくにフォトグラファーとして師匠について修行をするでもなくぶらぶらしていて。そんなときに、大学在学中に出版社でアルバイトをしていたつながりで、ピンチヒッターとして初めてフォトグラファーとして声がかかったんです。そこから、ポートレートや物撮りなどあらゆるジャンルの小さな仕事を打ち返していくうちに気がつけば仕事量が増えていきました。写真について学んでいたものの、商業写真を撮る勉強は特にしてこなかったので、現場で日々学びながら現在に至ります。
──多岐にわたる撮影スタイルも、そうした中で培われてきたものなのですね。
最初はファッションフォトグラファーを目指していたのですが、大人数での現場が性格的に合わず。そんなとき、ご縁あってカルチャー誌のポートレートページを撮るようになり、しばらく人物を中心に撮っていました。その後、「その感じでインテリアを撮ったら面白いんじゃない?」とインテリアスタイリストさんから声をかけていただいて。さらに建築家の方と知り合う機会があって、「今度うちの写真も撮ってよ」と。
そうした中で、僕が駆け出しだった頃からお世話になっていた旅雑誌の編集長から声をかけていただいて、旅の撮影に行くようになったんです。旅って、人から風景、建築まであらゆるものを撮らなきゃいけないので、とにかくなんでも打ち返してきたことが役に立ちました。
──ひとつひとつの仕事に真摯に取り組んだ先に、伊藤さんの代名詞と呼べる“旅”があったんですね。
家族4人、当時は僕のカメラの仕事だけで生活するにはギリギリの状態でした。「ひとつの現場で失敗したら先はないな」という焦燥感で仕事をしていたんです。そうした中でやっていたいろいろなことが、旅によってひとつの形になったように思います。それと、「旅先で一緒にいて邪魔じゃない」と言われたことはありますね(笑)。旅って、どこへ行く、よりも誰と行く、ということがとても大事じゃないですか。その点、僕は人を好きになる間口が広いタイプなのかな? そういったところでも声をかけてもらいやすかったのかもしれませんね。
──フォトグラファーとしての腕はもとより“面白がり上手”なお人柄も現在のご活躍につながっているのだと、お話を伺っていて感じます。
“面白がり上手”というのは、自分でも思い当たるところがあります。正直、どうしても作業的になりがちな現場ってあるんですよね。僕は、そういう現場を面白くする術として、密かに実験をするんです。例えば、普通のロケ取材なんだけど建築撮影の手法を取り入れたり、使いたかった機材を導入したり。あるレベルさえ担保していれば、クライアントに怒られないわけで。その中で実験や遊びを結構試していますね。作業的にこなせる仕事を刺激的にして楽しんだ方がいいじゃないですか。ポジティブにものを捉えられるのは結構自信があるかもしれません。
フルサイズにはない機動性を求めて
APS-Cだからこそ広がる表現
──そうしたアプローチも撮影の引き出しがたくさんあるからこそ。多種多様な現場を経験される中、現在メインで使用されている機材にたどり着いた理由を教えていただけますか?
フィルムからデジタルに移行して、フルサイズ機とマイクロフォーサーズ機を使っていたのですが、いつのまにかマイクローフォーサーズがメインになっていきました。一方で、使い続けるうちに飽きや限界を感じる場面も出てきて。ときに、お付き合いのあるライターさんがXシリーズを持っていたので、ちょっと貸してもらったんですよね。実際に使ってみたら、しっくりきて。じゃあ1台スナップ用に『X-T4』と『XF35mmF1.4 R』を買ってみたんです。これを持って日常スナップをしていたら、フィルムシミュレーションが面白くて、ここで完全にハマりました。
──そこから、撮影の現場で使用されるようになったきっかけは?
最初はボディが1台しかなかったので、仕事の時もサブでちょっと回すぐらいだったんですけど、結果メインで使うみたいなことが増えてきて。だったら、本格的に富士フイルムのカメラにしようかなということで、『X-H2』と『X-S10』を追加しました。APS-CがちょうどいいなというのもXシリーズを選んだ理由のひとつです。というのも、僕がやっているエディトリアルの領域だと、表現的にフルサイズは必須ではないんです。撮影スタイルとしても手持ちが多いですし、三脚を使わずに撮りたいタイプなので。フルサイズだと、ブレやピント合わせも結構シビアなので、APS-Cって僕の撮影スタイルに合っているなって。
──ピントの許容範囲の広いAPS-Cは、撮影のテンポ感にも対応してくれる、ということですね。現在は、『X-H2』2台と『X-T5』1台、そして『GFX100S II』2台の計5台が現場で活躍中とのこと。
基本的には、現場にすべて持って行きます。「カメラを3~4台ぶら下げる人はいない」って、よく言われますね。『GFX100S II』にはワイドのズームレンズを、あと2台には単焦点を着けています。出番が多いのは、『X-H2』ですかね。右手首が腱鞘炎になってしまったので、ボディに縦位置バッテリーグリップを着けています。そうするとシャッターを切るのがすごくラク。『X-T5』はデザインが大好きだけど、ある程度の大きさと重量感のある方が安定するので、操作面も含めて『X-H2』の方がプロの現場としては合っているなという印象です。
──そうした利点がとくに発揮されると感じるのは、どのようなときでしょう?
とにかくコンパクトじゃないですか。それでいて、奥行きのあるタイトな写真が撮れる。そこがすごく旅取材に合っていると思います。荷物が重くなっても身軽に動けるし、交換レンズも小さいですし。もし今フルサイズで旅撮影をすることになったら、確実にフットワークが落ちると思います。それと僕、ちょっと性格が雑なんですよ。だから機材が傷だらけなんですけど、富士フイルムのカメラは丈夫で、どんどん味が出てくる。ガチャガチャやっても安心感があるので、そういう意味でもすごく自分には合っているなと感じています。
読者の目を留める“違和感”と
色に宿るプロの表現領域
──先ほど、「フィルムシミュレーションがXシリーズにハマるきっかけになった」というお話がありましたが、富士フイルムの色づくりにはどのような印象をお持ちですか?
フィルム時代から富士フイルムを使っていたのですが、どちらかと言えば寒色が得意なイメージがあり、気分に合っていたのかな。フィルムシミュレーションは、ずっと『クラシッククローム』を使っています。コントラストが強めで、ちょっと地味な感じがすごく好きですね。最近、例えば『PROVIA/スタンダード』と『クラシックネガ』の中間くらいの、もう少し抑えめの色味も欲しいなと思って。ただ、自分で一から色を作るのは難しいので、RAW現像でそれぞれのフィルムシミュレーションを適用した画像を作ってレイヤーで重ねながら仕上げたりするものもあります。

X-H2 /XF16-55mmF2.8 R LM WR /F7.1 /1/1100秒 /ISO200 RAW現像データに、クラシッククローム50%+PROVIA/スタンダード50% を適用したものをレイヤーで重ねて仕上げ
──具体的に、富士フイルムらしい色表現が生きると感じるシチュエーションとは?
今日行ってきた撮影も快晴だったんですけど、青がすごくいい感じに出ていましたね。『クラシッククローム』で撮影しましたけど、なんというか恥ずかしくない青というか、へそ曲がりな青というか。赤とか青って、ちょっと派手に転びがちだと思うんですけど、派手さはないのに印象に残るというか、とてもいい青になります。
──伊藤さんの活動はエディトリアルがメインですが、例えば媒体ごとにトーンを合わせたりはなさらないのでしょうか?
そこはもう絶対に変えないようにして。誌面のデザインとか被写体でちゃんとその媒体らしく良い感じになるので。最近わかってきたんですよ、「あ、これは求められていないな」とか、僕に声がかかるっていうことはこういうことなんだろうなって。だから、ある程度テイストが決まった雑誌でも、そこに合わせすぎないようにしています。その雑誌のテイストそのままになっちゃったら、埋もれて読者の目には留まらないかもしれないけど、ちょっと違和感があるものだと見てくれるじゃないですか。そこでライターさんの文章も読まれることになれば、それが一番ハッピーな仕事の仕方だなって。
──そうして誌面で出会った伊藤さんのお写真が、誰かにとって旅に出る理由になったりするのだと思います。最後に、Xシリーズのブランドタグライン『愛おしさという哲学。』について、伊藤さんが写真に残したい“愛おしさを感じる瞬間”とは?
儚いもの、ですかね。落ちてしまった椿の花とか、水の雫とか。命が終わっていくような瞬間を見ると、思わず撮ってしまいます。山に入ると、お花屋さんで売ってないような花があるじゃないですか。虫に食われて、透けるぐらいの葉があって。朽ちてしまっているんだけれど、ちゃんとそこにある。旅をしていても、そういう存在に強く惹かれますね。

X-T4 /XF16-55mmF2.8 R LM WR /F2.8 /1/60秒 /ISO200 RAW現像データに、ETERNA/シネマ60%+クラシッククローム40% を適用したものをレイヤーで重ねて仕上げ
text by 野中ミサキ/NaNo.works
今回登場したカメラ
伊藤徹也さん出演!関連イベントのお知らせ
2026年9月26日(土)、東京の『OGAWA COFFEE LABORATORY 桜新町』にて、コーヒーと料理を被写体に写真撮影を楽しむワークショップ『美味しい写真の撮り方』が開催されます!
本イベントは、今回IRODORIに登場して頂いたフォトグラファーの伊藤徹也さんと、『シェルシュ』代表・オーナーシェフの丸山智博さんをゲストに迎え、Xシリーズを使いながら、店舗のフード&ドリンクを被写体にフードフォトの楽しみ方や美味しさを写真で表現するためのポイントを学べる、というもの。撮影後には、伊藤さんと丸山さんを交え、同店のモーニングセットを楽しみながら、撮影した写真について語り合う座談会も行われます。(※チケット販売終了)後日、会場の様子をレポートでお届けしますので、どうぞお楽しみに。
また、『OGAWA COFFEE LABORATORY 桜新町』では関連イベントも開催!
9月26日(土)・27日(日)の2日間は、カメラ・レンズの『タッチ&トライ』を実施。Xシリーズのカメラ・レンズを実際に手に取り、『OGAWA COFFEE LABORATORY 桜新町』のコーヒーや料理などを被写体に、その操作性や撮影体験を気軽にお楽しみいただけます。
さらに、同店では9月26日(土)から10月4日(日)までの期間、フィルムシミュレーションを体験できるスペースも設置。Xシリーズを使い、写真フィルムを交換するような感覚でさまざまな色表現を選び、同じ被写体でも異なる雰囲気の写真に仕上がる楽しさを体験していただけます。
コーヒーを淹れる人、料理を作る人、写真を撮る人。それぞれの視点を通して、一皿、一杯に込められた魅力をどのように写真に写し取るのか。撮影のテクニックだけでなく、被写体の見つめ方や光のとらえ方など、日々の写真をもっと楽しむためのヒントを得られるようなイベントになりそうです。


























