【Xシリーズユーザーインタビュー】オーナーシェフ・丸山智博とXシリーズ 料理と写真、その時々にしか完成しえないもの
代々木上原の『MAISON CINQUANTECINQ』をはじめ、数々の人気店を手がける『シェルシュ』代表・丸山智博さん(@chihiromaruyama)。料理人として厨房に立つだけでなく、店舗づくりやケータリングなどその活動は食を軸に多岐にわたり、SNSに投稿される写真には、丸山さんが手がける料理や空間への眼差しがそのまま表されています。今回は、これまであらゆるカメラを手にしてきた丸山さんにとって、撮る楽しさを教えてくれたという『X-T4』との出会いから料理と写真の共通点、カメラへの意欲と喜びの源泉について語っていただきました。
Interview:丸山智博
センサーサイズよりフィーリング
カメラの楽しさを教えてくれた『X-T4』
──丸山さんの場合はお仕事を通じて、撮影でフォトグラファーとお知り合いになる機会も多いかと思いますが、ご自身でカメラを手にされたのもそうした経緯からでしょうか?
そうなんです。大学生からコンパクトデジタルカメラは持っていたのですが、2010年に『MAISON CINQUANTECINQ』を開業してから、さまざまなプロの方に料理を撮ってもらう機会があって。そのたびにすごく感激していて、いつか自分もこんな写真が撮れたらいいなと感じるようになりました。しっかり写真をやりたいなと思ったのは、『X-T4』が発売されたころですね。
──2020年ですね。もともとはコンデジで撮影していらっしゃったとのことですが、ミラーレス一眼カメラを手にされたのも『X-T4』が初めてだったのでしょうか?
いえ、それ以前にさまざまなカメラを手にしてきてはいるのですが、しっかりと色づくりまで意識するようになったのは『X-T4』を手にしてからです。ミラーレス一眼を使いはじめたころは、本当にF値もISOも何にもわからず、ただただオートで撮っているだけでした。料理やケータリングの現場に行ったときの記録として撮影することが多かったですね。
──さまざまなカメラを経て『X-T4』との出会いには、どんな背景が?
まず、見た目が一番カッコいいじゃないですか。今でこそ中古カメラ屋さんによく行きますけど、その当時カメラを買う場所といえば大手電気屋さんしか知らなくて。下調べもしないまま売り場を眺めているなかで、スタッフの方といろいろ話しながら2択まで候補を絞ったんです。迷った結果、当時使っている人の多かったフルサイズセンサーのミラーレス機にしようと思ってレジまで行ったんですけど、やっぱり直前で違うなと感じて。
──どのあたりにそう感じたのでしょうか?
僕がカメラに求めていたのは、センサーサイズよりフィーリングだったんです。軍艦部のメカメカしい佇まいやレンズのコンパクトさを目にして、これこそ僕が持ちたいカメラなんじゃないか?と直前に気がついて。結局、レジから売り場に戻って「やっぱりこっちにします」と『X-T4』を購入しました。
──フィーリングで選んだカメラ、実際の使用感はいかがでしたか?
それはもうとにかく楽しくて。その後もいろいろなカメラを使ってきましたし、フィルムカメラも含めて一通りのカメラに触れてきましたけれど、それは最初に手にしたカメラが『X-T4』だったから、これだけカメラにハマることができたんだなってすごく感じています。なので、スタッフにも「どんなカメラを買ったらいいか」ってよく相談を受けるのですが、まずは富士フイルムを勧めています。僕にとっては、『X-T4』がカメラの楽しさを教えてくれた1台だったんです。
レンズの豊富さと選ぶ楽しみ
ファインダーを覗いたときの色の気持ちよさ
──その後、『X-Pro2』『X-Pro3』『X100V』など、Xシリーズのさまざまな機種を手にされてきたとのこと。その背景にはどのような理由が?
いろいろと触ってみたいので、買っては売ってみたいなタイプではあるんです。『X-T4』のあとに、またフィルムカメラもやってみたくなって、そのうちまたデジタルでも撮ってみたいなっていう気持ちが高まってきたときに『X-Pro3』を購入しました。その後、液晶の仕様がより理想的な『X-Pro2』も使ってみたいなという考えに。ただ、僕は気に入っているカメラほど「丁寧に扱わなきゃいけない」っていう心理が大きくなってしまうタイプなので、バッグにガサッて入れられるよう『X-Pro2』は中古のものを選びました。表面の塗装が剥がれて機械として使い込まれている感じがすごくカッコよくて、気に入って使っていました。使用感が味になるデジタルカメラって、あまりないと思うので、そこもXシリーズならではの魅力だと思います。
──ご自身のカメラライフに合うものを選ばれてきたんですね。経年による味のほかに、Xシリーズならではの強みを感じるポイントはありますか?
まずひとつは、フィルムシミュレーション。最近はRAW撮影するのであまり使わなくなっちゃいましたけど、『X-T4』を購入した当時は本当に楽しくて、自分なりのFSレシピも研究していました。とにかく、ファインダーを覗いたときの色が気持ちいいんですよね。『X-Pro2』や『X100V』では、OVFとEVFの切り替え機能も重宝しています。OVFとEVFの切り替えも重宝しています。あとはやっぱり、レンズのバリエーションですね。入門機的なレンズでも、とてもよく写る印象がありますし、パフォーマンスに対してリーズナブル。「今日はどれを持っていこうかな」って、選ぶ瞬間から楽しいというのはXシリーズの良さだと思っています。
──丸山さんが料理を撮る際に、特に使いやすいと感じるレンズはありますか?
単焦点35mmは、使っている人が多いし僕ももちろん使っていました。35mm判換算で50mmくらいの画角ですが、料理を撮るときはこのくらいの距離感で撮るのがいいなと思っていて。あとは、寄りたいと思ったときになるべく寄れるレンズも良いですね。『XF60mmF2.4 R Macro』もよく使っていました。
イメージカットとか雰囲気込みの料理は、『XF35mmF1.4 R』とか『XF35mmF2 R WR』で撮ることが多いですね。ウェブサイトやSNSでしっかりぼかさずに撮らなきゃいけないときと、スナップ感覚で逆光とかで開放で撮るときとで、レンズを変えています。
カメラがあるから、仕事も楽しい
仕事以外にも没頭できる時間の素晴らしさ
──丸山さんがお料理以外で撮影したくなるのは、どういうものでしょう?
スタッフの働いている姿。あとは普段、気になったものをスナップ感覚で撮っています。
──お料理はもちろん、空間や風景までさまざまなものを撮影されていますが、ご自身の感性はそれぞれどんなところに表れていると感じますか?
しっかりライティングして絞って料理を撮るのも好きで勉強していますし、もっと自由にスナップ的に自然光でシャッターを切るような写真も撮れたらいいなと思っていて。つまり、まだスタイルが固まってないんですよ。カメラを始めて10年ぐらい経って、1周巡って、もう一度カメラを持つ喜びを感じているところです。今は、日常的に持って出掛けたくなるカメラが欲しくて、『X-T5』が気になっています。
──丸山さんが考える“いい写真の共通点”があればお聞きしたいです。
時間が経って見直した時に、光景や空気感、誰がそこにいたかが鮮明に思い浮かぶ写真はいいなって思いますね。料理もそう。作った人や農家さんの顔が思い浮かんだりするような料理には、人の気配があるし、いろんな人の気持ちが乗っているなって思います。写真にしても料理にしても、きっちり作り込んだものより、その時々にしか完成しえないものがあると思っているので、最近はちょっと余白を作って臨むようにしています。とくに、自然光で撮る時は、時間や窓からの光の入り方で全然違うから、被写体と光がはまった時はやっぱり楽しいですよね。
──カメラに対する意欲や喜びの源泉は、どこにあるのでしょう?
仕事以外あまり趣味がなく、独立してからもしばらくはそうだったんですけど、カメラを好きになってより仕事も楽しくなったんです。あとは、成長できるところもいいですよね。やればやるほど上手くなるというものではないし、最初のうちは思うように撮れなくてストレスになったりするんですけど、そこも含めて面白いなと。カメラに限らず、どんな趣味にも楽しめないフェーズがあると思うんです。だけど、それすらも愛せるようになれば趣味以上のものに繋がっていくのかなと。人間、仕事以外にも没頭できる時間があるって、本当にいいことですよね。そのことをカメラが改めて教えてくれました。
text by 野中ミサキ/NaNo.works





























