【Xシリーズユーザーインタビュー】ドラコと『X-S20』 クラシックネガで描き出す、日常にたゆたうノスタルジー
“フィルムとデジタルの境界線”をテーマに、SNSで作品を発表しているドラコさん(@dora_film_)。初めてカメラを手にして以来、数々の機材を手にするなかで、富士フイルムの色、そしてXシリーズでの撮影体験に魅了されたといいます。普段テレビ業界に身を置くドラコさんには、Xシリーズを駆使し報道の現場を支えてきた経験も。プロの現場で求められる冷静な記録の視点と、自身の心が動いた瞬間を切り取る趣味の視点。その双方に応えてくれるカメラとしてのXシリーズの強み、唯一無二と語るフィルムシミュレーションの色表現、そしてドラコさんが現時点での最適解として常にカバンに忍ばせている『X-S20』について、オールドレンズを組み合わせた独自の画づくりと併せてお話を伺いました。
Interview:ドラコ
試行錯誤を経てたどり着いた、
Xシリーズという“最適解”
──まず、カメラを始めたきっかけと、富士フイルムのカメラにたどり着いた経緯を教えてください。
僕がカメラを始めたのは、8年ほど前です。会社の同期が一眼レフカメラで撮った写真の描写力、スマホにはない奥深さに衝撃を受けたのがきっかけでした。また、もともとノスタルジックな空気感やフィルム映画も好きだったので、フィルムカメラにも挑戦しました。ただ、まだカメラに疎い時期だったこともあり、仕事の忙しさも重なってなかなか続けられず、半年ほどで断念してしまいました。
その後、一年ほど経ったころにSNSで他の方の写真、とくに富士フイルムの写真を見かけるようになって「また撮りたい」という気持ちが高まりました。そこから他メーカーのカメラで何台か撮影しましたが、いろんなカメラを経たからこそ“富士フイルムにしかない色”に気づき、最終的に富士フイルムに行き着いたという流れです。初めて手にしたのは、たしか『X-T2』だったと思います。
──『X-T2』にはじまり、ドラコさんはこれまでに『X-T4』『X-T10』『X-Pro2』『X-Pro3』と、本当に多くのモデルを手にしてこられたそうですね。
『X-T10』はサードカメラ的に欲しくて購入しました。本格的に富士フイルムへの気持ちが高まったのは、やはり『X-Pro3』が一番大きいです。僕もそうですが、『X-Pro3』によって『クラシックネガ』に魅了されたユーザーは少なくないのでは。当時はフィルムカメラも触っていましたが、現像代やフィルム価格の高騰を肌で感じていました。いずれフィルムは嗜好品になるだろうと思ったので、今のうちにデジタルでフィルムのような空気感や質感を再現できるカメラが出れば、と思っていたところに『X-Pro3』が登場したんです。その後、『X-T4』が発売されてからは、バランスや持ち運びの良さ、機能を含めて本当に完成されたカメラだなと感じ、『X-S20』を手にするまではずっと『X-T4』をメインで使い続けていました。
プロの眼差しと、日常の物語性。
『X-S20』の機動性でキャッチする光景
──『X-S20』は非常にコンパクトかつ、シリーズ初のVlog機能搭載機で動画に強いという特徴があります。ドラコさんが同機を選ばれた理由のひとつもそこにあるのでは?
まさにそのとおりで、まず一番は「軽い」ということ。実は以前、『X-E4』も購入したことがありました。ただ、僕には少しコンパクトすぎてすぐに手放してしまったんです。それでも、コンパクトなカメラを持ち歩く気楽さは実感できたので、他にちょうどいい機種がないかと探した際に出会ったのが『X-S20』でした。昔はフルサイズ機にバッテリーグリップをつけて、1キロほどある機材で一日中歩き回っていましたが、今そんなことをしたら体が壊れてしまいます(笑)。そう考えたとき、『X-S20』の軽量感は現代のニーズに非常に合致していると感じました。
動画についても、『X-S20』は本当に軽いので常に片手に持ってすぐ構えられます。『X-T4』でもおもに仕事の現場で動画撮影をしていましたが、より機動性の高い『X-S20』だからこそキャッチして撮れるものが増えたという感覚はあります。『X-S20』はつねにバッグに忍ばせていますね。仕事が終わったあとに「時間があったら撮ろうかな」という気持ちもあるので。
──『X-S20』のポータビリティが大きな強みになっているのですね。Xシリーズにおけるボディデザインや機能に対する好みのポイントがあれば教えてください。
『X-S20』に関しては、コンパクトでありながら無機質じゃないところが魅力だと感じています。Xシリーズのデザインは、昔のフィルムカメラを彷彿とさせる素晴らしいもので、使っていて飽きません。実際に構えたときの感覚、オールドレンズとの組み合わせの相性も含めて、ずっと使っていきたいと思わせてくれる逸品ですね。
──ドラコさんの撮影スタイルについても聞かせてください。フィールドワークがメインになるスナップにおいて、撮りたくなるものや瞬間はどんなところでしょうか。
他の方からは「光と影の美しさ」や「人が通った瞬間を狙う」といったこだわりを聞くこともありますが、僕はそこまで構えていなくて。道を歩いていて奥行きのある道路に出くわしたり、建物を撮ろうとしたりするときに人が歩いてきたら「ラッキーだな」と思うくらいの感覚です。1時間待って1枚を撮るというより、1分待って1枚を狙うスタイルなので、心が大きく揺れ動いた瞬間というよりは、「ここを『X-S20』で撮れば、すごくフィルムのようなノスタルジックな雰囲気になるんじゃないか」という感覚に引っ張られて、まんべんなくシャッターを切っています。
──きっと、日常の中に物語性を見出すのがお上手なのですね。
どうでしょう(笑)。ただ、オフィス街を歩いていても、少し無機質であまり心が動かないのですが、下町や田舎に行くとシャッター回数がすごく多くなります。古きよき時代の趣が少しでも残っている光景に出会うと、心が動いてシャッターを切ってしまいますね。
──先ほど、お仕事の現場で『X-T4』を使って動画撮影をされていたというお話がありましたが、カメラ関係のお仕事をされていらっしゃるのでしょうか?
テレビ業界で報道の仕事をしています。実は、『X-T4』で撮影した映像を放送したこともあり、番組のアーカイブ素材として保存されています。おもにグルメ取材で料理の撮影に使っていたのですが、「あの色で4倍スローが撮れるんだ」と周りの先輩や同期も感銘を受けていました。スチールはもちろんムービーの手ブレ補正やスローモーションの機能も本当に完成されていますし、『X-T4』は僕にとって買い替えるのではなく修理してでも使い続けたいカメラです。
──プロの現場で活躍しているというお話は、ものすごく説得力がありますね。お仕事と趣味とでは、撮影の視点に明確な違いがありそうですね。
そうですね。報道は明確な指示のもとで必要な要素を撮影します。ときには、現場の状況を伝えるために3日間カメラを構え続けるというときもあります。一方で趣味の場合は、目の前の景色すべてにおいて、いいなと思ったら全体を切り取る。そこが仕事と趣味の明確な境界線です。ただ、僕が担当する番組は幅が広く、事件や災害もあれば、物産展やグルメ取材もあります。グルメ取材なんかは趣味の視点に近くて、料理が出てきたときに「この画角や距離で撮れば美味しそうだな」と、共通する感覚で撮ることもあります。当然、写真を撮る時の黄金比などは、仕事でも活用していますね。
創意工夫から生み出される
フィルムとデジタル、現実と夢の境目
──個人的に、ドラコさんの作品には、馴染みのある風景への親しみと懐かしさがありながら、どことなく現実味のないような不思議な感覚を覚えます。
SNSで最初にフォロワーが一気に増えたのが、福井県で撮影した写真でした。深夜に夜行バスで行き、早朝に着いた際にちょうど日が出始めるくらいのタイミングだったんです。若干明るくなって、でもまだ月は残っていて。街灯越しの月を撮ったのですが、それを見た海外の方から「in a dream(夢のようだった)」というコメントがたくさん付きました。そのときに、観ている人の心を揺り動かすのは、そういった現実にないような情景を映し出すことなんだな、と気づかされましたね。そこから質感や色合いをフィルムからさらに勉強して、どれだけ近づけられるか、というきっかけになりました。さまざまなカメラを使ってきたなかで、Xシリーズはとくに現実から引き離されるような雰囲気を出すのが得意なカメラなのではと思っています。
──撮影者の頭の中にあるストーリーやイメージを出力してくれるカメラなのですね。
ムービーも同様で、ディテールや色合いが非常に調整しやすいです。最近は、オールドレンズを使ってムービーを撮ることにすごくはまっています。富士フイルムとオールドレンズは相性の良い組み合わせだと思っていて、最近も旅行先であえて無限遠からちょっとピントを外して撮影した際、昔の映画のような少し柔らかい質感になりました。こういうことができるのも、『X-S20』の機能、軽さ、そしてムービーの強さがあるからだと思います。
──もし差し支えなければ、どうすればドラコさん風の写真が撮れるのか、普段の撮影設定や画質設定などのTipsを教えていただけますか?
僕は、グレイン・エフェクトはすべて『大』に上げて、ディテールのノイズ感度は全部『-4』にしています。そこからレタッチアプリ『VSCO』を使ってひと手間加えます。他の機種だったらトーンカーブやハイライトを細かく調整すると思うのですが、僕はもう、とにかく荒く、全部マイナスですね。『VSCO』は暖色系が多く、ヨーロッパの黄色に近い色になるので、僕の写真もそれに近しい空気になっているのかもしれません。それと、デジタルでフィルムに近い写真を撮るために、僕はあえてカビや曇り、キズありのジャンク品のレンズを狙って手に入れています。今使っている28mmのレンズも、お見せしたら「こんな汚いの使っているのか」というくらい汚れています(笑)。
──そうした汚れは、写りにどう表れるのでしょう?
曇りがあると、すごくふわっとするんですよ。美品だったらフレアもゴーストも全然出ないのですが、あえてジャンクを選んでフレアやゴーストをガンガン出すことで、非常に非日常的な写真や動画を作り上げられているかなと思っています。
──そうした創意工夫から独自の表現が生まれているのですね。色表現についてフィルムシミュレーションの使い分けやこだわりはありますか?
これに関しては、もう本当に『クラシックネガ』一択ですね。考えた開発者の方は天才だと思います。仕事の撮影では、違和感のない『ノスタルジックネガ』を使っていました。実は使いはじめのころ、『クラシックネガ』で映像を撮ってオンエアしたら「あまりにも世界観が強すぎる」と怒られたことがあります(笑)。ただ、趣味で撮るぶんには、『クラシックネガ』の色味は追随を許さない唯一無二なものなので、これ以外を使う理由が正直思い浮かばないくらいです。自分の撮ったフィルム写真と見比べたとき、『クラシックネガ』の赤、青、緑、黄色の出方が一番近いんです。僕は「どれだけフィルムに近づけられるか」をテーマに掲げているので、万が一『クラシックネガ』が使えなくなってしまったら、泣いちゃいますね。
──普段、SNSでの発信を目的として撮る部分もあると思いますが、純粋に「カメラで写真を撮りたい」という気持ちの源はどこにあるのでしょう?
それは、まず心から気に入っているカメラを持っているからかなと思います。クラウドには大量の写真が入っているのですが、数年前の写真を見返したときに「あ、このときは北海道のここで撮っていたな」と、すごく懐かしい気分に浸るのが好きなんです。行動を記録するだけならスマホでもいいのですが、富士フイルムのカメラだからこそ「懐かしいなあ」と思える。SNSに投稿するという目的もひとつありますが、それ以上に、写真を撮る瞬間だけでなく見返したときに感情を沸き立たせてくれる部分が大きいです。
──そうした思い出を振り返ることの心地よさや感動を「愛おしさ」という言葉に置き換えたとき、ドラコさんにとってカメラで写真を撮るという行為とどう紐づいていますか。
すごく安易に言葉にするのが難しいのですが、富士フイルムのファインダーを覗いた瞬間、僕は愛おしさを全身で感じられるのかなと思っています。肉眼で見た情景と同じ世界であるはずなのに、『X-S20』のファインダーの先にはまったく違う色味や質感が写り込んでいて、カメラに引き込まれる感覚になります。例えば海に行って太陽が乱反射した光景も、肉眼でも綺麗ですが、富士フイルムだとより淡くなります。僕はオールドレンズを使うことが多いので、フレアやゴーストが出て、そこに富士フイルムの特性が乗っかったときに、他のカメラにはない魅力、愛おしさが伝わってくるなと思います。同じ世界だけど違う世界が広がっている。そのファインダーの世界こそが、僕にとっての愛おしさであり、Xシリーズは、そうした写真が撮れる唯一のカメラです。
text by 野中ミサキ/NaNo.works




























