旅を暮らしの延長線に──『X100Ⅵ』と海のある街 モロイ ユウダイvol.1
はじめに。
50歳か60歳か、はたまた70歳か、お弁当屋さんになりたい。
どこかの街で、そこにいる人たちと土地に囲まれたお弁当屋さん。お弁当を作る人ではなく店頭に立つ人がいい。そのためにも、お店を建てる場所を今から探す必要がある。26歳の自分が決めた場所なんて、数十年後の自分は認めてくれないかもしれないけれど──。
国内で“旅”や“旅行”をしている時は、いつも頭の片隅で想像する。
もし、この土地でお弁当屋さんを開いたら、と。
有意義な時間だ。今の自分にとっては意味のない空想の時間に思えるが、その時々で旅ごとの思い出の色や形、トーンに影響を与える。同じ内容の想像を旅ごとですることによって、全く異なる旅たちは繋がりを持ち、普段の暮らしとも接点を持ち始める。
旅や旅行をするにあたって、自分なりのマイルールを持っている。いくつかあるが、その中でも特に大切なことは全ての旅(旅行)を暮らしの地続きにすることだ。もっと分かりやすく書けば、旅(旅行)と普段の暮らしに境界線を隔てることなく一直線の時間を過ごすことを心掛けている。旅(旅行)の時にだけ聴く音楽、旅先(旅行先)だけで読む本など、限定されたルールを作ることで旅と旅は繋がってくる。自分の場合は、それを「もし、この土地でお弁当屋さんを開いたら、」という想像に置き換えている。
だから、今回の旅行でも「もし、この土地でお弁当屋さんを開いたら、」と想像をしていた。
※補足
旅と旅行の違い。近い、遠い、距離に関わらずいつも過ごしている居場所から抜け出すことは旅でもあり、旅行でもあると思います。ただ、似たようなこの言葉には明確な違いが自分の中に存在しています。簡単に説明をすると、「旅」は自分にとって大きめな現実逃避です。人や土地、言語などの関係性が自分と白紙の状態を指します。何よりも、私自身が疎外感を感じながら生活することをしたい、または目的とした場合にそれを「旅」と呼ぶことにしています。
対して「旅行」は現実逃避、白紙、疎外感などは考えることなく、とてもシンプルにエンジョイすることだけで頭がいっぱいになるものを「旅行」と認識しています。
この違いはとても小さいことかもしれないですが、自分の心の中では「家と外」と同じくらい大きな差があります。
旅行の目的とカメラ
すこしだけ高い場所に位置するこの宿からは相模湾を眺めることができる。
部屋の中、遠くもなければ、近いとも言えないような距離から海を眺めていると白波の動きがとてもゆっくりに見え、どこか心が穏やかになっていくことを実感できた。
この旅行には目的がふたつある。
ゆるゆる過ごすこと。そして、江之浦測候所を訪れること。基本的な時間の使い方は「何もしないをする。」がメインテーマの2日間。小田原から真鶴の間を電車やバス、たまに歩いて移動をしていく。そうそう、伝え忘れていたが今回は富士フイルムの『X100Ⅵ』が旅のお供になる。そしてサブカメラに『X half』を使って、一緒に旅行をする人に写真の撮影をしてもらった。結論から伝えると、期待通りどちらも旅先で重宝したカメラでした。
“旅”と“旅行”ではカメラ選びに違いがあると考えている。
旅行・・・移動先でストレスが生まれないカメラ選び
旅・・・クオリティと手馴染みが優先されたカメラ選び
今回は1泊2日とごく一般的な旅行のように過ごしたい思いが先行していたため、上記の場合である旅行としての役割を果たすことのできるカメラを選びたかった。その点において、この2機種はストレスを感じる理由が省かれた、旅行にぴったりなカメラである。
小さくて、すぐに撮れる。
それに加えて、フィルムカメラ時代からの系譜を継いでいる富士フイルムのカメラでしか味わうことができない使用感とデザインに居心地の良さを強く感じる。(これは普段からフィルムカメラをメインで使っている自分だから感じるものかもしれません。)
おかげで、この2日間は楽しく思い出を記録していくことができた。
海のある街と江之浦測候所
海のある街に到着したら、まずは海岸に向かいたくなる。ゆるい時間が流れていくことに楽しさを感じる自分は、浜辺で石を投げたり、何回も押し寄せてくる白波をただ眺める。
この街でお弁当屋さんを開いたら──。と、いつものように海を眺めながら想像していると、横には石を積み上げている人がいる。同じ場所にいるけれど、バラバラだ。
宿のチェックアウトと同時に江之浦測候所へ向かった。
写真家であり、現代美術作家である杉本博司さんが構想に10年、建設に10年をかけて作られたこの建物は名前の通り、太陽の光や気候などを測候する場として構想されている。実際に足を運んで感じた雰囲気としては、海と空、水平線の間に立っているような錯覚が起きる、浮遊している感覚を強く覚える場所だったと思う。
もし、この土地でお弁当屋さんを開いたら、自分は何弁当を看板メニューにするだろうか。建物の外観はすこしだけ重厚感を感じるデザインがいいかもしれない。
当分の間、頭から離れなかった。
今回登場したカメラ
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