【Xシリーズユーザーインタビュー】オカモト ヒロヤと『X-T50』 ファインダー越しにそっと掬い上げる、小さな幸福のかたち
アートディレクター/デザイナー/建築家として、空間からグラフィック、プロダクトまで領域を横断して活動しているオカモト ヒロヤさん(@hiroya_fm)。リアリティシリーズへの出演を機に、そのライフスタイルやクリエイターとしてのルーツに注目が集まっています。
仕事と日常を横断するクリエイターとして活動するなか、機能性に信頼を置き愛用しているという『X-T50』。ヒロヤさんにとって同機は、あらゆるアウトプットの源泉であり、新しい気づきや自分の中のルールを壊していく面白さを教えてくれる存在だといいます。今回は、『X-T50』を軸に、クリエイティブの原点から写真表現についての向き合い方、日常の小さな美しさを見出す眼差しと、その背景にある哲学に触れるお話を伺いました。
Interview:オカモト ヒロヤ
建築家としての原点と
感性に寄り添うカメラとの出会い
——今回はまず、ヒロヤさんが写真に興味を持たれたきっかけからお伺いできますか?
初めてカメラを手にしたのは2016年ごろ、大学3年生のときですね。ロンドンに留学することになったので、いろいろな建築を巡るヨーロッパ周遊を計画したんです。その旅を記録するために、家電量販店で店員さんにおすすめされたミラーレス一眼カメラを購入しました。
——では、当初は主に建築物を撮影していらっしゃったんですね。
そうですね。僕、Instagramのアカウントをずっと変えていないので、その当時の投稿も残っています。今みたいにSNSに顔を出していなかったので、建築やロンドンの街並みを含め、旅先の風景写真ばかりを撮ってアップしていましたね。
——そこから現在愛用されている『X-T50』と出会うまでに、どのような経緯があったのでしょうか。
トイカメラからハーフサイズカメラまでひととおり使って、撮影の知識も深まっていくにつれ、現在の仕事やライフスタイルにフィットするカメラが欲しいと感じるようになりました。その中で出会ったのが『X-T50』。もともとはフルサイズ機で検討していたのですが、富士フイルムのブランドコンセプトやプロダクトとしての美しさに惹かれて、「コレなんじゃないか?」ってピンときたんです。
一瞬を焼きつける撮影の“実感”
1回のシャッターが生み出す価値
——アートディレクターという側面からも、モノ選びに対しては感度の高さとシビアな目線をお持ちだと思います。直感的に惹かれた『X-T50』の機材としての納得感とは、どんなところにあるのでしょうか?
まず、質感、見た目、無駄のないデザインですね。デザイン性を強く打ち出したカメラはほかにもありますが、どこかおもちゃっぽさを感じてしまって。「本物だ」と思える洗練された『X-T50』の質感にはとても満足しています。それと、やっぱりこのコンパクトなサイズ感。普段カメラを持ち歩くときは、右手にハンドストラップを通して、片手は常にカメラを持っている状態にしています。持ち運びたくなるこの軽快さは、日常の風景を作品に変えるために最も重要な要素だと感じています。
——操作感についてはいかがでしょう?
『X-T50』は、フィルムシミュレーションダイヤルが天面についていますよね。ダイヤル操作でモードを切り替えられるのは直感的ですごくわかりやすいです。それと、フラッシュがすごく優秀で。北海道での共同生活中にも持参した『X-T50』でたくさん写真を撮っていたのですが、みんなでご飯を食べているときなんかに室内でフラッシュをONにして撮った写真がすごくいいんですよ。ボーイズのなかにも写真好きな子がいて、お互いのカメラを交換して撮り合うなんてコミュニケーションもありました。
——撮影スタイルについても教えてください。ヒロヤさんは“ファインダーを覗きたい派”だそうですね。
もちろん液晶を見ながら撮影することもありますが、ファインダーのほうがリアルな感じがするんですよね。「ちゃんと見て撮っている」という実感も結構大切で。僕にとってファインダーを覗いてシャッターを切るのは「この瞬間を焼き付けるんだ」という願掛けに近いのかもしれません。「この1枚にかけるぞ!」という魂の籠り具合も強い気がするんです。しっかり構図を決めて、ちゃんと光を確かめながら丁寧に撮る。スマホで100枚撮って1枚選ぶことと、このカメラでファインダーを覗いて1回のシャッターでバシッと撮るのでは、価値が全然違う気がしています。
光を捉えて空間の情緒を綴る
レンズ越しになぞる自分自身の視点
——先日開催された個展『HANAKOTOBA』の展示作品も『X-T50』で撮影されたそうですね。
青空を背景に撮ったお花を使って作品をつくりました。正直、大きく印刷しちゃって大丈夫なのかなって少しだけ挑戦でもありましたが、『X-T50』でしっかり作品として成り立つ写真が撮れることを確認できました。
——撮影時、とくに意識していることはありますか?
“光”を最も大切にしています。建築の世界でも光は重要ですが、写真を撮るようになってからは、繊細な光の変化により敏感になりました。僕はよく自室を撮影するんですけど、カメラを通して見ると冬場の太陽の光が低く入る午後1時〜2時の部屋が一番好きだって気づけるんです。最近は室内照明の研究もしていて、光の効果を試行錯誤するのが楽しみです。
——使用されているレンズについても教えてください。
メインで使っているのは、『XF35mmF1.4 R』。最新のレンズではありませんが、F1.4の明るさと、どこか情緒のある“味”が気に入っています。35mmってフルサイズ換算だと 50mm程度じゃないですか。ポートレートを撮るのにもちょうどいいんですよね。僕はずっと建築や風景の写真ばかり撮っていましたけど、このレンズを使うようになってからは人を撮るようになりました。
——そのほかにもレンズを所有されているとのこと。どのように使い分けていらっしゃいますか?
作品としてパキッとした描写が欲しいときは『XF16-50mmF2.8-4.8 R LM WR』、遊び心を出したいときはオールドレンズを組み合わせるなど、表現したい空気感に合わせて選択しています。最近は、部屋を撮影するための広角レンズが欲しいなと思っていて、『XF8mmF3.5 R WR』が気になっています。
——お話を伺っているなかで、ヒロヤさんにとって撮影とは、記録だけでなくご自身の視点を拡張してくれる役割があるのだと感じています。
そうかもしれませんね。よく「建築学生はスケッチをしなさい」と言われるのですが、スケッチはその空間の質や自分が何をいいと感じているのかに気づくためのプロセスなんです。もちろん僕も描いたことはあるんですけど、忍耐力があんまりないので「写真を撮るほうが現代的じゃん」と思っていたんですね(笑)。手段は違うかもしれないけれど、どの画角で、どの時間帯の太陽ならいい画になるのかと考えることは、スケッチと写真に共通するところだなと思います。
——先ほどの「ファインダーを覗いて撮ること」にもつながるお話ですね。『X-T50』の色表現とフィルムシミュレーションへの印象も聞かせてください。
僕はわりと彩度高めのパキッとした明るい写真が好きかもしれないですね。色彩も結構ちゃんとバシッと出しちゃうタイプ。わかりやすく楽しい感情を奮い立たせるような、そういう写真が好きなのかもしれません。普段は、編集前提で『PROVIA/スタンダード』で撮影をすることも多いですが、『クラシックネガ』や『ノスタルジックネガ』の世界観には惹かれます。
ルールの先に拡張していくクリエイティブ
写真に宿る眼差しと「愛おしさ」の正体
——先日のタイ旅行でもフィルムシミュレーションを活用されたそうですね。『X-T50』の写真で作成されたリール動画も素敵でした。
今回の旅で改めてフィルムシミュレーションを多用したのですが、撮影した瞬間に完成する“撮って出し”の色の力、その場の空気感を閉じ込める魅力を再確認しました。タイのアユタヤに行ったときは、この空気感に合うだろうなっていう直感があったので、フィルムシミュレーションを『クラシックネガ』に設定して露出やシャッタースピードを1回1回マニュアルで調整して撮影しました。
フィルムシミュレーションの特性を学んで、「こういう景色だったらこの色調で撮ろう」ってルールを決めて遊ぶと、クリエイティブの幅がちょっと飛躍するんですよね。「たまたまいい写真が撮れた」ではなく、縛りやルールを設けて写真で遊ぶことに面白さを感じています。
——そうした“遊び”のように、『X-T50』を手にしたことによる視点や表現の変化などはありましたか?
建築写真の大前提は、“水平垂直”なので、僕も基本的にはそこを合わせたい人間なんです。だけど、たとえば友達にカメラを渡して撮ってもらうと、ポートレートを意外な角度で撮っていたりするんですよね。最初は「ありえない!」と思うんですけど(笑)、写真を見ると「結構いいじゃん」って思えたりして。そういう自分の中にあるルールを壊していく勇気をもつことは課題でもあり、自分にはない視点に気づかされるのもカメラの面白いところだなと思います。
——出演作品や今回お話を伺っていて強く感じるのですが、ヒロヤさんは人や物事に対する視点がすごくポジティブで肯定的ですよね。
昔は、自分にも他人にもバキバキに厳しかったんですよ(笑)。スパルタな家庭で育ったので、学生時代は本当に尖っていて。でも、社会人になっていろいろな人に出会うなかで己を知りはじめたし、「人から学びたい」って思うようになりました。人間は完璧じゃないと理解したことで余裕が出てきて、周りが見えるようになりました。最近はすごく心が豊かになってきた感覚があります。
——さまざまな出会いのなかで得たマインドなんですね。最後に、Xシリーズのブランドタグライン『愛おしさという哲学。』について。ヒロヤさんにとって、カメラに収めたくなる“愛おしさ”とはどんな瞬間に感じるものでしょうか?
僕は、朝起きて空が晴れている喜びだったり、雨が降って落ちた花びらの美しさだったり、そういう日常の機微に気づける眼差しを大切にしたいし、それこそが人間の幸せだと思うんです。僕にとっては、そうした幸せを思い起こさせてくれるものが写真。SNSでは華やかな世界も見せますが、本当に心が動くのは、部屋に差し込む西日の美しさや、旅先で見つけた何気ない路地裏だったりします。誰かに見せるためだけではなく、自分だけが気づいた小さな美しさを、壊さないようにそっと掬い上げる感覚。自分の中で完結する「愛おしい」という密かな確信を、『X-T50』はかたちにしてくれる気がしています。この「大切にしたい」と願う気持ちこそが、僕にとっての愛おしさの正体かもしれません。
text by 野中ミサキ/NaNo.works
今回登場したカメラ































