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Special 2025.03.28

フィルムシミュレーション『ノスタルジックネガ』で撮るベストショット〜ありあ・中村イチ・片渕ゆり〜

Xシリーズを愛用しているフォトグラファーさんに、各フィルムシミュレーションで撮影したベストショット2枚と、そのフィルムシミュレーションに感じている魅力や自身の想いをご紹介していただく本企画。今回は、1970年代に登場した”アメリカンニューカラー”の再現を目指したフィルムシミュレーション『ノスタルジックネガ』について、ありあさん(@aria_photo_ )、中村イチさん(@nandinyuan)、片渕ゆりさん(@yuriponzuu)に語っていただきました。

ノスタルジックネガ ①:ありあ

見返してみると、トルチェッロ島での写真は、すべてノスタルジックネガで撮られたものであることに気づきました。意識的にそうしていたわけではありませんでしたが、いま考えると、無意識的にそう設定していたのだと思います。この島がヴェネチアを構成する島のひとつであるといっても、本島からは船で1時間近くかかりますし、観光客も多くなければ、あるのは数件のトラットリア(食堂)と住居、あとは古びた大きな教会だけ。時代に取り残されたような建物の造りや流れる時間のゆったりさからは、“ノスタルジック”という名のとおり、このフィルムシミュレーションとこの島の相性はピッタリでした。

写真に写る彼女たちは、古くからの友だちなのだそう。「写真を撮らせていただけませんか」と言うと、ふたりは快く受け入れてくれたものの、もうふたりは「わたしはシャイだからわたしは端っこに隠れるわ」って。最終的に後ろ姿を撮らせていただけることとなったわけですが、結果的にこれは正解だったかもしれません。各々服の好みも髪の色も異なりますが、ずっと一緒にいたのであろうことは、背中が語っています。ノスタルジックネガで撮ったからこそ、感じとれたことかもしれませんね。

X-T50 /XF35mmF1.4 R /F8.0 /1/180秒 /ISO200
フィルムシミュレーション:ノスタルジックネガ

「なんと図々しくて、そして堂々とした猫なんだ」この写真を撮った時のわたしの気持ちは、およそそんな感じでした。どのフィルムシミュレーションで撮影しようかなと、カチカチダイヤルを回してあれでもないこれでもないと悩んでいたにも関わらず、そのあいだ猫は微動だにせず、「気品に満ちたシラクーサの街と上品な私の組み合わせは素敵だにゃん?早く撮るにゃ!」と言っているようでした。

X-S20 /XF35mmF1.4 R /F2.5 /1/640秒 /ISO320
フィルムシミュレーション:ノスタルジックネガ

ノスタルジックネガは全体的に落ち着いた色合いに仕上がりますが、それに加えて、上品なものごとを上品のままに写してくれると、わたしは考えています。シャドウ部がブルーやグリーンになる特性がある一方で、全体的に暖かい色乗りとなるため、クリーム色の建物が多い南イタリアでは、このフィルムシミュレーションはとても相性が良いと感じました。

Profile

ありあ

写真家、文筆家。山形県出身。大学で西洋美術史を学んでいる。
2021年に祖父の形見としてフィルムカメラを譲り受けて以来、写真の魅力に取り憑かれてしまう。幼少期から書いている日記や、世界中を旅した際に記した旅日記を、写真とともにSNSで発信し話題に。WEBメディア「MARSH」で連載コラムを担当。

Instagram:@aria_photo_
Twitter:@aria_photo_

ノスタルジックネガ ②:中村イチ

70年代のフィルムをベースに低コントラストで温かみのある色味に仕上げられたフィルムシミュレーションのノスタルジックネガ。このフィルムシミュレーションを使えば旅の記憶が妙に哀愁を醸します。

雨風に晒された木の質感に心を奪われて撮った写真。
ノスタルジックネガの温かみのある色味や暗部を沈みきらせないコントラスト感が絶妙で天気や時間帯も上手く再現してくれています。

GFX100 II /GF80mmF1.7 R WR /F4.0 /1/125秒 /ISO80
フィルムシミュレーション:ノスタルジックネガ

こちらの写真は、光が奥まで届かない空間に合わせ、低コントラストで暗部の階調をキープしてくれるノスタルジックネガを選びました。
それに加え、この独特な色調が哀愁味のある趣に仕立ててくれるので、重みのある雰囲気で撮影したい、質感を残したい、というときに重宝します。
特にAPS-Cセンサーのカメラでは、コントラスト感などの特性が活きそうですね。

GFX100 II /GF80mmF1.7 R WR /F3.2 /1/60秒 /ISO100
フィルムシミュレーション:ノスタルジックネガ

Profile

中村イチ

1985年 兵庫県生まれ。
2004年 商業写真からキャリアをスタート。
写真事務所とスタジオ経営を経て現在は写真を主としたデザイン事務所 ”Nowhere” 代表兼写真家として広告写真などを担当中。

Webサイト:https://gallery.mediciism.com/gallery/ichi-nakamura/
Instagram:@nandinyuan

ノスタルジックネガ ③:片渕ゆり

ノスタルジックネガの好きなところは、撮った景色がやわらかく温かみのある表情になるところです。単に目の前の視覚情報を切り取るのではなく、撮る人の感情までいっしょに写真に閉じ込めるような表現に惹かれます。

こちらの写真は、ハワイのマウイ島で撮影しました。私は便利なズームレンズを使うことが多かったのですが、この光景を見た瞬間に「どうしてもこのレンズで撮りたい」という気持ちになり、『XF35mmF1.4 R』に付け替えました。海と空、それぞれの優しい青色が写せてお気に入りの一枚です。また、地元の人も多く、ゆっくりと時間が流れているような穏やかな空気が似合うのではないかと思ってノスタルジックネガを選択しました。

X-T5 /XF35mmF1.4 R /F2.0 /1/6400秒 /ISO125
フィルムシミュレーション:ノスタルジックネガ

路面電車の写真は、アメリカ西海岸のサンフランシスコで撮影しました。サンフランシスコというと真っ赤な橋やカラフルな街並みを思い浮かべる人も多いと思います。私も実際に訪れるまでは色鮮やかなイメージをしていたのですが、じつは霧の多い街なんです。気持ちのいい陽射しが射すタイミングを待ちつつ、汗だくになりながら何度も坂を登り降りしてシャッターチャンスを探し回りました。数々の映画やドラマの舞台になってきた街で、懐かしい映画の1コマのような風景がまさに“ノスタルジック”だなと思いました。

X-T5 /XF35mmF1.4 R /F2.8 /1/1000秒 /ISO320
フィルムシミュレーション:ノスタルジックネガ

Profile

片渕ゆり(ぽんず)

フォトグラファー/文筆家
なによりも旅が好き。
SNSをメインに、旅にまつわる文章や写真を発信している。
著書に「旅するために生きている」

Instagram:@yuriponzuu
Twitter:@yuriponzuu
Note:https://note.com/yuriponzuu

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