【テーブルフォトテクニック vol.2】フォトグラファー高橋優里さんに学ぶ、リビングで日常を素敵に撮るコツ
おしゃれで素敵なテーブルフォトの撮り方のコツを、気になるあの人に聞く連載企画『テーブルフォトテクニック』。第二回目はフォトグラファー高橋優里さんに、リビングの一角で気軽にテーブルフォトを楽しめるコツを教えていただきました。
Vol.2 高橋優里
はじめまして。高橋優里(@you43n_stilllife)と申します。
バリスタとして勤務する傍ら、休日はリビングの一角でテーブルフォトを撮影して楽しんでいます。被写体はフードに限らず、花やコーヒー、アクセサリーなど様々です。
テーブルフォトを本格的に撮り始めたのは、Xシリーズを手にした4年ほど前からです。今回は私が普段どのように撮影しているのかや、なぜXシリーズを使用しているのかなどをご紹介できればと思います。
自宅リビングでのテーブルフォト撮影のポイント
ポイント①:被写体が綺麗に見える場所を探す
私がいつも撮影している場所は、自宅リビングの窓際です。
撮影専用部屋みたいなものはなく、ソファを少し動かして空けた1㎡(畳でいうと半畳くらい)ほどのスペースを使っています。
間取りの関係でダイニングテーブルがある場所には光が入りません。家の中でいちばん光が入る窓際を使い、テーブルや壁に見えるボードなどを用意して、そこに撮りたい物をセッティングします。
背景として主に使用するのは、イラストボード。裏表で色が違うのでパターンが豊富。
サイズはB3とB2で、正直もう少し大きいサイズが欲しいところですが、大きすぎると場所を取り管理が大変なので、現状このサイズで落ち着いています。そして大理石風の背景は、ペット用の涼感プレートです。30cm四方くらいの小さいサイズですが、テーブル役として大活躍しています。
床を使うことで、俯瞰撮影がしやすいです。
私は身長154cmで、テーブルだと俯瞰撮影するには椅子に乗らないといけません。その点、床だと被写体までの距離を十分に取ることができるので撮りやすくなります。チルト液晶モニターのカメラなら、ローアングルや俯瞰撮影がさらに楽に撮影できます。
構図を自由に変えながら撮りたいので、基本的には三脚は使わずに手持ちで撮影しています。
自由に動けることで、美しい角度や瞬間に気づくことができます。
ポイント②:自然光を利用する
“撮影場所は窓際”である通り、自然光で撮影をしています。
私の場合、作品撮りというよりは、日々の記録のようなものです。愛用品の美しさや日常の変化を写真に残す感覚なので、気軽に撮れることが大切。ライティングやストロボなどは使いません。また、自然光が作り出す二度とない瞬間が見られるのも魅力です。
いい光の元で撮るために、どの季節、どの時間帯、どの部屋に、どんな光が入るのか観察するのが日々の楽しみの一つ。日々変わりゆく季節に一喜一憂したり、こういう時間の大切さに触れられるのも写真のいいところだなと感じています。
自然光がいいとはいえ、よく晴れた日の強い光だと多少調整したい時もあります。そこで便利なのがカーテンです。
レースカーテンと遮光カーテンを開け閉めして、光の強弱や通り道をコントロールします。また、被写体と窓の距離感でも光の雰囲気は変わるので、構図と同じく位置もこまめに変えるようにしています。
自然光と言っても、晴れた日じゃないと撮れないわけではありません。曇りや雨の日は、光が拡散されて落ち着いた印象、しっとりしたテイストで撮ることができます。
ポイント③:完成図やシーンを想像しながらスタイリングする
テーブルフォトを始めた頃は撮影用に小物を買っていましたが、一度しか使わないこともあり、物が増えていくのが悩みでした。
現在は私生活で気に入って使えるものをセレクト。質感、使い心地などを吟味するようになりました。普段使いできて愛着も増し、好きなものを集めるのでテイストも統一されます。
テーブルフォトは完成図がある程度イメージできていると撮りやすいかと思います。ゼロから創造するのは慣れないとなかなか難しいですが、日常の一コマをイメージするとスタイリングがしやすくなります。例えば、“さっきまで作業をしていたデスクでコーヒーブレイク”なら、ノートパソコン、ヘッドホン、コーヒーカップと自然に小物が決まっていきます。
今から料理やお菓子を食べるとして、どんな飲み物や器を合わせるのか、誰とどんな時に食べるのかペアリングや情景を考えることでもイメージしやすくなります。
長時間撮影が苦にならないXシリーズをセレクト
現在、私は『X-E4』を愛用していますが、初めて手にしたXシリーズは、夫の『X-Pro2』。 『ACROS』を使って自宅で花を撮ったのが最初でした。
夫が使っているのを見ていてカメラの格好良さ、描写の美しさは常々気になっていましたが、撮ってみてすぐにその虜になりました。液晶に再生された写真は、デジタルの艶っぽい綺麗な質感ではなく、昔のモノクロフィルムで撮ったかのような重厚な質感でした。粒状感がとても綺麗で驚いたのを今でも覚えています。
Xシリーズを使うまでは編集ソフトで現像をしていましたが、時間はかかるしイメージ通りにならないことが悩みで、大の苦手でした。そんなとき手にしたX-Pro2。これならカメラだけで楽しく好きなテイストが撮れそうだと思いました。その後、夫から借りる頻度が高くなってきたため『X-E3』購入に至り、現在はEシリーズ最新機種であるX-E4を使っています。
私が考えるXシリーズの魅力は、何と言っても小型・軽量なところ。
フルサイズ機を使用していたこともありますが、綺麗なボケや解像度と引き換えにカメラもレンズも大きく重いことがネックでした。カメラが小さく軽くなったことで撮影は格段に増え、意欲もあがっていきました。夢中になると2時間ほど撮っていることもありますが、Xシリーズのカメラなら長時間撮影も苦になりません。
テーブルフォト撮影におすすめのフィルムシミュレーション
フィルムシミュレーションは、使うシーンやイメージに合わせて色々使い分けています。
さらに、各フィルムシミュレーションは好きなテイストになるようハイライトやシャドーなどカスタムできる項目は設定を変更して使います。料理を作る時に塩胡椒で味を整えたり、隠し味を入れたりするのに似た感覚。ちょっとした加減でガラッと変わるのが楽しいですね。
特にテーブルフォトにおすすめなのは『クラシッククローム』でしょうか。テーブルフォトを撮り始めた頃からよく参考にしていたのが海外の写真でした。好きなテイストがシックな色味が多く、クラシッククロームの渋い発色とコントラストがマッチして、今の作風に繋がるきっかけとなりました。今ではカスタム設定の1番に登録して、いつでも使えるようにしています。個人的にはもう少し彩度が欲しいのでカラーを+2にすることも。
『クラシックネガ』はどこか懐かしさや儚さを感じさせる色味。個人的にはもう少し締まったほうが好みなので、シャドーをプラスに設定。X-T4以降の機種では、ハイライト/シャドーが±0.5単位で設定できるので、絶妙な調整が可能なのが嬉しいですね。
ハイライト部分にマゼンタが強めに乗るのも特徴だと考えていて、これが使う場面によっては少し個性が強すぎると感じることもあります。WBシフトで赤をマイナス、青をプラスへ調整することで食べ物を撮る時にも使いやすくなります。
私がテーブルフォトを撮り始めた頃は、“料理を撮るもの”や“テーブル上で撮るもの”など勝手なイメージが邪魔をして難しく考えていました。しかし、Xシリーズと出会って今では日記を書くように好きなもの、日々の記録を気軽に楽しく撮れるようになりました。
お料理やお菓子作りの記録、愛用している道具・アクセサリーなど“日常の好き”を気
軽に撮って楽しんでみてください。一つ一つの出来事の尊さを改めて感じたり、日々への愛着がさらに増すかもしれません。