富士フイルムXシリーズとそぞろ歩き~吉田あきひろ×フィルムシミュレーション『ETERNA』×福井・三国町~
フィルム時代から90年以上に亘って色彩表現を追求・研究してきた富士フイルムならではの、20種類のフィルムシミュレーション。
今回Xシリーズと一緒にそぞろ歩きをしていただいたのは、写真展を共同開催するコミュニティ『僕らの写真展』を主宰している、吉田あきひろさん(@akihiro90mm)。
吉田さんが小春日和に訪れたのは、歴史ある港町として知られる福井県・三国町。フィルムシミュレーション『ETERNA』で切り取った風景と、この土地にゆかりある友人との対話を通して感じたことを織り交ぜた、暮らしの息吹を感じるフォトウォークをお届けします。ぜひみなさんも追体験してみてください。
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今回のそぞろ歩きのお供は、『X-Pro3』。
ファインダーを覗き、目の前の景色を一枚ずつすくい取っていくような感覚を味わえるカメラです。液晶を見ながらではなく、自分の感覚を少し信じて、直感的にシャッターを切る。その距離感が、この町にはよく合っていました。
向かったのは、福井県・三国町。
自宅から少し距離があるその町へ、えちぜん鉄道で向かいます。
レトロな一両編成の電車に揺られながら、車窓を眺める。
最後尾の窓から伸びていく線路。歩き出す前から、すでに旅の気分です。
三国駅に着いて、まず駅の裏手にあるエッセル坂へ向かいました。
緑が濃く、少し小高い場所からは、えちぜん鉄道の電車も見える。風が抜けて、光もやわらかい。散歩日和な1日。
そこから坂を下り、海の方へ。
三国町の道は、上がって、下りて、曲がって、また少し登る。坂があることで、同じ町の中にもさまざまな見え方が生まれます。
そのリズムの中で歩いていると、ふいに海へ出ました。
漁港近くには、漁船がいくつか停まっています。人の姿は少なくても、暮らしの気配がある。『X-Pro3』を持っていると、そういう気配に自然と足が止まります。
そのままビーチまで歩くと、港とはまた違う、ひらけた海の景色が広がっていました。
その後、三国にゆかりのある友人たちと合流。おすすめの酒饅頭を教えてもらい、頬張りながら町を歩きます。
友人が子どもの頃に探検していた小道の話。この時期は三国祭を中心に町が動き、学校や仕事の予定にまでその空気が入り込んでいるという話。昔は、近所の人との距離が今よりずっと近かったという話。
そういうエピソードを聞きながら歩くと、目の前の道や建物が、ただの風景ではなくなっていきます。誰かの記憶や暮らしに触れるように、ファインダーを覗いていました。
次に向かったのは、三国神社。
神社の中に入ると、空気が変わります。
青々とした緑、木々のあいだから落ちる光。厳かなのに、どこか爽やかでした。
そこからさらに、友人に案内されて神社の奥へ進みます。指された先にあったのは、道に見えるような、見えないような小道でした。草木が伸び、かつて通れたであろう道が今は通れなくなっていたり、別の抜け道を見つけたり。
小道を抜けると、ふいに視界が開けて、緑のトンネルが現れます。
たくさんの小道は、子どもたちの遊び場であり、生活に必要なお店へ抜ける近道でもあるそうです。舗装された道や、自転車、車での移動が当たり前になった今、あえて歩くことでしか見つけられない道があることが印象的でした。
便利さを手に入れると、通らなくなる道がある。けれど、歩いた人だけが知っている景色もある。
町のほうへ戻ると、また別の三国が見えてきました。
歩いていると、空き家にも何度か出会いました。けれどそれらは、ただ寂しい景色として残っているだけではありません。
若い人たちの手によって、旅館として生まれ変わった場所があり、コミュニティの拠点として使われている場所がある。空き家を活用した芸術祭も開かれています。
古いものを壊して新しくするのではなく、使い方を変える。誰かが関わることで、もう一度意味を持ちはじめる。
三国町には、完成されていないものを、そのまま受け止める余白があるように感じました。
実は、私が運営している写真コミュニティ『僕らの写真展』でも、2026年秋にこの三国町で、住民参加型のフォトプロジェクトを予定しています。地元の人たちに『写ルンです』を配り、それぞれの暮らしの断片を撮ってもらう。そして、その写真を集めて大きなインスタレーションを制作し、空き家に展示する企画です。
特別な絶景ではなく、日々の中にある小さな視点。誰かにとっては何気ない景色も、別の誰かにとっては大切な記憶かもしれない。
町のあちこちに残る、誰かの生活の跡。それもまた、写しておきたい三国町の表情でした。
今回、三国町を歩きながら、この企画の意味も少しずつ自分の中で立ち上がってきました。
『X-Pro3』のファインダーを覗きながら、道なき道を進む。その先にある景色と、町の暮らしに思いを馳せながら、静かにシャッターを切る。『ETERNA』で写した三国町は、どこか記憶に近い色をしていました。
今回の三国歩きは、そんな時間でした。




































