【Xシリーズユーザーインタビュー】スタイリスト・安田悠人と『X-Pro3』 「成長記録にボツ写真なんて一枚もない」
原宿のヘアサロン『らふる』の店長を務めるスタイリストであり、『X-Pro3』で撮影した娘さんと息子さんの写真がSNSで多くの共感を呼んでいる安田悠人(@yas_yu111)さん。子どもの成長を見つめる穏やかな視線や親子の距離感が伝わる写真たち、その根底には安田さんが重んじている“子どもファースト”の意識があるといいます。数あるXシリーズの中で子どもを撮影するカメラとしてX-Pro3を選んだ理由とは? 「写真を撮ることを楽しいと思わせてくれた」というX-Pro3の魅力やカメラと自身の価値観の一致について語っていただきました。
Interview:安田悠人
――SNSにアップされているお子さんたちのお写真、どれも微笑ましいものばかりですね。まずは、安田さんが写真を撮られるようになったきっかけから教えていただけますか?
子どもたちが産まれる前から仕事でモデルさんや自分がカットしたスタイルを記録するために、10年ほど前にデジタル一眼レフカメラを買いました。ただ当時は、完全に仕事道具という感覚で、写真を撮ること自体にあまり興味がなかったんです。周りにカメラマンの方も多かったので、最初の頃は僕が手を出す分野ではないっていう感覚もありました。自分で写真を撮ることが楽しいと感じるようになったのは、やっぱり一人目の子どもができてからですね。妻のお腹が大きくなる様子を撮るようにしていたんですけど、「お腹こんなに出てたっけ!?」って写真を見返すたびに驚きがあって、「日常を写真に残すって、すごくいいな」と思ったのは、そのことがきっかけでした。
――上のお子さんはもうすぐ7歳だそうですね。当初は先ほどお話にも出た仕事用のカメラで成長記録を撮影されていたとのこと。Xシリーズとの出会いには、どんな経緯が?
子どもが産まれてしばらく経ったころにフルサイズのカメラを買ったんですけど、いわゆる“THE一眼レフ”という佇まいのカメラを持って子どもと遊びに行くことに違和感があったんです。それで手にしたのが、『X-T3』でした。X-T3はいい意味で撮られていることを意識させないカメラだと感じましたし、もともと写真が上手な友人がX-T3を使っていたこともあって気になっていました。今はX-T3を手放して、『X-Pro3』を使っています。
――“Xシリーズでお子さんを撮影する”という点に絞って考えると、より適した機種もあるかと思うのですが、X-Pro3を選んだ理由とはどういったところにあるのでしょう?
X-Pro3のシンプルなデザインも好きですし、クラシックネガを使ってみたいという動機もあったんですけど、そもそもX-Pro3っていろいろと尖っているカメラじゃないですか。確かに、子どもを撮影するんだったらもっと扱いやすい機種もあるとは思うんです。だけど、クセの強さっていうのは僕にとってすごく大きな魅力で。例えば、背面モニターを隠すことができる仕様は、自分の価値観にすごく合っていると感じています。
というのも、子どもの成長を記録しているのであって、作品を撮っているわけじゃないので、ポージングは要求しないし、写真を撮るたびにどんなふうに写っているのかモニターで確認もしないんです。それで、家に帰ってからその日に撮った写真を見直すと、ブレていたりピントが合ってない写真も結構あったりするんですけど、それは子どもが自由に遊んでいるからこそブレているわけで、その都度モニターを確認しないからこそ撮れるものがあると思うんです。そういう意味でX-Pro3は“写真って楽しい”と思わせてくれたカメラですね。
――撮る楽しさを追求したX-Pro3の仕様と安田さんが撮影するうえで大切にされていらっしゃることが一致したんですね。お子さんを撮るときに意識していることをもう少し聞かせていただけますか?
先ほどお話したとおり、ポーズを指示しないということは一番気をつけています。「もう一回あそこに戻って、こっち向いてもらえる?」なんて言ってみたりしたこともあるんですけど、その瞬間はそのとき限りだし、人間って撮られるってわかっていると撮られることを意識した顔になるじゃないですか。だから、基本的には会話をしながら胸元でカメラを構えて撮ることが多いです。写真を撮るために子どもと出掛けるわけじゃなくて、あくまで遊び優先。その中で「ちょっと記録させてもらうよ」っていう感覚です。なので、子どもの写真というよりは、僕が子どもたちと遊んでいるときに見ている風景、と言ったほうが近いかもしれませんね。
――そんな風景やその場の空気感を写し出すうえで、富士フイルムの色づくりやXシリーズの描写力について感じる魅力があれば教えてください。
クラシックネガを使ってみたくてX-Pro3を買ったものの、普段はPROVIAで撮っています。Xシリーズで撮った写真を見て特に魅力だと感じるのは、肌の色の美しさ。また、ブルーやグリーンの色合いもキレイで、すごく好きです。それと、いい意味でキレイに収まり過ぎない描写もXシリーズのいいところだと思っています。実はもう一台、仕事用に他メーカーのフルサイズミラーレスカメラを持っているんです。なぜわざわざカメラを使い分けているかと言うと、いわゆるヘアカタログに掲載するような写真が必要なときに、X-Pro3だと良くも悪くも雰囲気が出過ぎてしまう気がしていて。逆に、なんの制限もない自社のサイトには、X-Pro3で撮影した写真を使用しています。
――写真に求めるものに応じて使い分けていらっしゃるんですね。レンズの使い分けについてはいかがでしょうか?
レンズもいろいろ試した結果、髪の毛一本までこだわって作ったスタイルを撮影するなら50mm*のレンズ、子どもを撮るなら35mm*のレンズということで、X-Pro3を使う時は『XF23mmF1.4 R WR』という結論に落ち着きました。35mmって恋人レンズって言われる距離感だと思うんですけど、子どもと出掛けるときは基本的に手をつないでいることが多いので、その状態でも撮れるものを選んだときに一番しっくりきたのがXF23mmだったんです。
*35mm判換算
――レンズ選びにもお父さんならではの視点が活きているんですね。そして、安田さんのお子さんも『X100F』を使っていらっしゃるとのこと。つまり親子でXユーザーなんですね!
X-Pro3よりも子どもが扱いやすいカメラを、ということで買いました。X100シリーズもすごくいいカメラですよね。一緒にフォトウォークをしてみたりもするんですけど、一枚も撮らないときもあれば100枚くらい撮っているときもあったりします。子どもならではの視点が面白くて、月一ぐらいでどんなものを撮ったのかなって見てみるんですよ。そうすると、下の子とかとんでもない格好の妻の写真とか(笑)。散らばった色鉛筆の写真なんかもあったりするんですけど、多分撮った理由なんてないんですよ。散らばっている感じがいいなって思ったんだろうなって。それってちょっと本質だよなって思ったりしました。
――写真から生まれる親子のコミュニケーションも素敵ですね。カメラを通してお子さんの成長を見つめる安田さんの気持ちがお話から伝わってきました。
カメラがなかったら残せなかった瞬間ってたくさんあると思うんです。くしゃみする瞬間とかって、動画ではなく写真で見るからこそ面白いじゃないですか。SNSで“ボツ写真”なんて言葉を見かけることもありますけど、そんなの一枚もないと思うし、ブレていてもボケていても僕にとってはどれも消せない写真ばかりです。
text by 野中ミサキ(NaNo.works)